保険適応の体外受精ではできないけれど、自費ではできること

自費での体外受精とは

 

保険適応のある患者様の初回の採卵は保険適応を勧めます。

しかし、全ての患者様が保険で上手くいくわけではありません。

また年齢制限もあり、保険を使えない患者様もおります。

そうした、患者様に対して

当院ができる選択肢を提示します。

 

基本的に選択肢の幅は自費の方が広く

保険で出来ることは全て自費で出来ます。

タイムラプス、子宮内フローラ検査/慢性雌雄内膜炎検査、子宮鏡、SEET法、2個移植、2段階移植なども全て可能です。

卵子が取れない、空胞が多い方へ

メラトニン

 

メラトニンは強力な抗酸化力で

卵子の正常な発育をサポートします。

卵胞内で卵子を保護し

卵子の質の改善(変性卵の減少)

受精率や妊娠率の上昇

が報告されております。

 

費用は1か月1,700円です。

詳細は下記の記事をご覧ください。

メラトニンは採卵(不妊治療)の成熟卵子数を増やします。摂取量は?

DHEA

 

卵子が少ない方に勧めるのがDHEAです。

DHEAは男性ホルモンや女性ホルモンの原料となるホルモンです。

採卵数の増加

受精率や妊娠率の増加

が報告されております。

 

費用は1か月2,000円弱です。

詳細は下記の記事をご覧ください。

卵が育ちにくい方、少ない方へ DHEA

 

ダブルトリガー、トリプルトリガー

『採卵をしたけれど、卵子が回収できませんでした。』

採卵の結果として最も悲しいものです。

 

採卵は卵胞に針を刺して内用液ごとすべてを吸引して卵子を回収する手技です。

 

ただ、1つの卵胞を刺したら毎回1つ卵子が回収できるわけではありません。

その原因としては様々なものがありますが

成熟が足りなかったことも原因の1つになります。

 

卵子は成熟すると顆粒膜細胞からはがれ、卵胞内に浮遊します。

そうしますと、下記のイメージのように卵子が回収できます。

 

 

成熟が足りないと卵子が剥がれないため

下記のように卵子が回収来ません。

 

 

また、卵子には成熟卵子と未成熟卵子があり

成熟卵子の方がその後の発育もよい場合が多いです。

 

成熟卵子の回収率を上げるためには、しっかりと成熟することが必要になります。

 

保険診療では卵子を成熟させるための

36時間前に使用するトリガーは

点鼻薬ないしhCGの注射のどちらかしかできず

併用はできません。

 

自費診療では卵子の成熟率を

上昇させるために併用が可能です。

 

詳細は下記の記事をご覧ください。

採卵の空胞や未熟卵を減らし、成熟採卵数を増やす工夫

エストロゲン併用低刺激法

ルトラールとデュファストンの違いは?

 

卵巣予備能がかなり低下している患者様に行います。

※FSH>20mIU/mL以上やAMH<0.2ng/mL以下が目安です。

AMHが低くても、卵巣内の原始卵胞が全て消失するわけではありません。

しかし、FSHが高い状態が続いていると卵巣の反応性が低下し

卵胞の発育が難しくなります。

 

エストロゲン製剤を投与することにより

FSHの値を低下させ

卵巣の反応性を回復させます。

 

使用するエストロゲン製剤は

内服薬としてプレマリン、ジュリナ

注射薬としてペラニンがあります。

※特にペラニンは注射製剤だけあって、エストロゲンの濃度を急速に上げてくれます。

残念なことにプロゲデポーと同じように生産中止となったため

メーカーが保険申請はされませんでした。

 

受精率が低い方、胚盤胞になりにくい方へ

レスキューICSI、スプリットレスキュー

レスキューICSIとは、体外受精(ふりかけ法)で

受精の兆候が見られない場合に追加でICSIを行い、

ふりかけ法での未授精卵を救済する方法です。

 

<レスキューICSIのメリット>

ふりかけ法で全く受精が起きず、

受精卵が得られないという事態を防ぐことができます。

split法(ふりかけ法+顕微授精)の場合でも

併用することができます。

 

また、卵子の膜が弱く、顕微授精とは相性が悪い患者様には

まずはふりかけ法での受精を試みて

もし受精しなければ顕微授精でカバーする

という戦略がとれると言えます。

 

<レスキューICSIの手順>

ふりかけ法を行ったその日の夕方に

卵子の周りの細胞を取り除き

受精しているかを確認します。

 

 

ふりかけ法を行った卵子に

受精の兆候が見られなければ

受精障害が起きていると判断し

レスキューICSIを行います。

 

ご希望の患者様は採卵日にお伝えください。

フラグが多い方へ~透明帯除去培養~

採卵を繰り返しても毎回フラグメンテーションが多く胚盤胞に育たない方の場合、

卵細胞膜と透明帯の間に“癒着”が生じている可能性があります。

 

 

その“癒着”を人為的に取るのが“透明帯除去培養”です。

以下が操作の概要です。

高張液で卵子を一時的に縮め、つながりが見られる受精卵には透明帯の一部にレーザーをあて、その後培養液を吹きかけることで透明帯との癒着を完全に断ちます。

 

 

この処理を行うことでフラグメンテーションの発生を抑え、受精卵の発育改善が期待できます。

 

詳細は下記の記事をご覧ください。

フラグメントが多く、胚盤胞まで育たない方へ ~透明帯除去培養~

費用は最初の1つが22,000円、追加1つごとに5,000円です。

採卵周期開始時にお伝えください。

胚盤胞でも妊娠されない、流産されてしまう方へ

複数の経路からの強力な黄体補充

ホルモン補充周期での黄体ホルモン薬の使い方です。

下記のイラストの赤線の部分です。

 

 

黄体ホルモンの投薬の仕方は3種類あります。

・経口(デュファストンやルトラールなど)

・経腟(ルティナスやルテウムなど)

・注射(プロゲデポーなど)

 

保険の場合は併用が出来ないため、膣剤の1種類のみです。

自費の場合は縛りが無いため

黄体補充をより強力に行うことが出来ます。

基本は経口+腟剤で

黄体ホルモンの低い方にはさらに注射も併用しております。

経口薬も妊娠するまでは、より強力なルトラールを使用します。

 

詳細は下記の記事をご覧ください。

より良い黄体ホルモン薬の使い方~胚移植において~

ルトラールとデュファストンの違いは?~ホルモン補充での使い分け方~

GM-CSFの子宮内注入

 

着床障害の原因が

子宮内膜の胚への受容性の低さの場合

移植の際に着床を助けるものを加えることが

効果的な患者様もおります。

 

GM-CSFは子宮内膜のマクロファージを活性化させ

着床に有利に働きます。

特に子宮内膜が薄い患者様及び胚のグレードが悪い患者様が良い適応です。

 

使用方法としては

移植時に胚と共に注入する

ことが多いですが

子宮内膜が薄い患者様は

排卵後に単独で子宮内に注入する

を加えても良いかともいます。

 

注入するだけですので、痛みは特にありません。

費用は32,780円です。

詳細は下記の記事をご覧ください。

反復着床不全の治療 GM(G-CSF) vs hCG vs 生理食塩水

不育症の方へのバイアスピリン投与

 

流産が続く不育症の方に

近年は着床障害のある方にも

血が固まりやすい性質がないか検査を行うときがあります。

 

その性質があると血栓ができやすくなり

胎盤(絨毛)の血管を詰まらせて流産を引き起こします。

 

腕の血管などは太く、流れも速いので詰まらないのですが

胎盤(絨毛)の血管は細く、流れがゆっくりのため

詰まりやすいです。

 

対処法としては

低容量アスピリン(当院ではバイアスピリン)の内服です。

血をサラサラにする効果があり、血が固まらないようにします。

1日1回1錠内服するのみです。

詳細は下記の記事をご覧ください。

不育症・着床障害の方への低容量アスピリン(バイアスピリン)はいつから開始するか?

ビタミンD、銅・亜鉛の改善

 

ビタミンDは骨の成長に係るビタミンですが

不足することにより

妊娠率の低下

流産率の上昇

が報告されております。

 

不足を改善するためには

サプリの内服が早いのですが

患者様ごとに必要な量が違います。

 

十分な患者様は飲む必要ないですし

すごく足りない患者様が

1日1錠ではなかなか改善しません。

 

採血で濃度を測定して、必要な量のサプリをしっかり飲みましょう。

採血はいつの時期でもできます。

 

詳細は下記の記事をご覧ください。

ビタミンDで不妊治療(体外受精)の妊娠率を上げましょう

不妊治療のビタミンD での治療~サプリはいつ飲む?摂取量は?いつまで?~

 

さらに加えて銅・亜鉛の採血を行うことも推奨しております。

こちらもサプリで改善可能です。

詳細は下記の記事をご覧ください。

不妊症、着床障害に銅・亜鉛を測定する意味はありますか。

PGT-A

 

当院は、日本産科婦人科学会認定の着床前遺伝子異数性検査(PGT-A)実施施設です。

 

体外受精や顕微授精で得られた受精卵(胚盤胞)の細胞の一部を採取(生検)し

その細胞の染色体の数の有無を調べるのが着床前診断です。

 

 

加齢とともに染色体異常が増えるため

胚移植当たりの妊娠率、生産率は下がります。

しかし、PGT-Aを行い正常胚を得られれば、全年齢で60%以上の妊娠率を得ることができます。

 

ただ、メリットばかりではなく、デメリットもあります。

下記の記事もご覧ください。

PGT-A(着床前診断)のメリット・デメリット ~妊娠率・流産率は~

 

PGT-Aを受ける際には、日本産科婦人科学会作成の動画を視聴し、チェックリストのご提出が必須となります。

下記の日本産科婦人科学会様のHPより、どなたでもご視聴可能です。

私も動画を視聴しましたが、とても分かりやすいです。

興味がある方は是非ご覧ください。

動画の視聴とチェックリストのダウンロードはこちら(日本産婦人科学会HP)

 

ご希望の患者様は院長にご相談ください。

精子への工夫(※無料です)

ミグリス

 

精液には動いていない精子や

奇形な精子が混じっています。

遠心分離をすることで良い精子だけを選別するのですが

精子DNAの損傷が生じることが報告されております

 

新しい選別法であるミグリスは

精子DNAの損傷が低いことが報告されております。

 

詳細は下記の記事をご覧ください。

胚盤胞まで育たない方、ならない方へ ~新しい精子調整法~

PICSI(ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)

 

精子には成熟度があります。

従来の形や動きを目で見る判別法に加えて

ヒアルロン酸でDNA損傷の低い

成熟した精子を選びます。

 

保険の場合は先進医療として29,000円をご請求しておりますが

自費の方は無料(0円)で行っております。

※顕微授精でのみ行えます。

 

詳細は下記の記事をご覧ください。

不妊治療での先進医療のご説明 ~タイムラプス・SEET法・2段階胚移植、子宮内細菌叢検査、PICSI~

減額及び培養結果のメールサービス

採卵回数に応じた減額

当院では2回目の採卵以降は

採卵代を2万円減額させていただいております。

5回目以降は4万円減額。

 

費用の詳細につきましてはこちらを参照ください。

培養結果のメールサービス

採卵後の

・受精結果及び

・胚培養の結果(胚盤胞のグレードなど)

をメールでお伝えしております。

 

対面でのご説明も可能です。

タイムラプスを使用した患者様に

発育動画をお見せしております。

費用はいただいておりませんので、ぜひご覧ください。

 

詳細は下記の記事をご覧ください。

胚が良い環境を維持するために ~タイムラプスインキュベーター~

院長 菊池 卓