ビタミンDで不妊治療(体外受精)の妊娠率を上げましょう

 

※過去の記事を加筆修正しています。

ビタミンDと不妊について聞いたことがある方も多いかと思います。

元々ビタミンDは骨に関する働きが有名ですが

近年ビタミンDの不足が不妊症や流産に関係するという報告が増えてきました。

 

下記論文は、私がビタミンDについて調べていたときに最初に読んだ論文です。

2014年と少し古いですが、インパクトがありましたのでご紹介いたします。

 

 

卵子提供の方の胚移植前のビタミンD濃度を調べています。

採血でビタミンD濃度を測れます。

 

血中濃度が30ng/ML以上が正常値ですが

・十分群 ビタミンD(30ng/ML以上) 35人

・不十分群 ビタミンD(20~30ng/ML) 38人

・不足群 ビタミンD(20g/ML未満) 26人

胎児心拍陽性を妊娠とし、比較しております。

 

結果です。

卵子提供ですので、卵子の質は同じと考えて下さい。

 

 

妊娠率 十分群 74%  不十分群 42% 不足群 35%

生産率 十分群 57%  不十分群 34% 不足群 31%

妊娠率、生産率ともにビタミンD十分群の方が有意に良かったです。

 

この論文のインパクトは大きく、ビタミンDと体外受精についての論文が多く出るようになりました。

その論文をまとめたのが次の報告です。

 

ビタミンD濃度とIVFの成績に関する11論文2,700名の女性を対象としたメタ解析です。

 

 

結論からいいますと、ビタミンDの不足が解消されると体外受精の成績が有意に改善することが報告されております。

 

 

上記は11論文2700人をまとめたものです。

ビタミンDが十分だと臨床妊娠率のオッズ比が1.46でした。

 

 

上記は7論文2026人をまとめたものです。

ビタミンDが十分だと生産率のオッズ比が1.36でした。

 

上記の論文からビタミンDの不足を解消すると体外受精の成績は改善しそうです。

では自然妊娠を目指す方にはどうかを調べたのが下記の論文です。

 

 

対象は健康で妊娠歴の無い18~39歳の女性132名とそのパートナー。

6周期タイミングをとってもらい

・ビタミン Dの推定平均必要摂取量 (EAR)である 10μg/日を満たしたかどうか

・血中ビタミンの濃度が適切なレベルにある 50nmol/l以上であるかどうか

を群分けして臨床的妊娠率と生児出産率を比較しています。

 

結果です。

 

臨床妊娠率

ビタミンD摂取十分群 67.5%  不十分群 49.0% 

血中濃度十分群    64.3%   不十分群 38.9%

共に有意差を認めております。

 

生児生産率もビタミンD摂取量において十分群 59.0%  不十分群   40.0%で有意差を認めております。

 

 

上記が臨床妊娠率の調整後のオッズ比です。

・1日摂取量が十分であれば2.26

・血中濃度が十分であれば3.37

共に有意差を認めております。

 

自然妊娠を目指している患者様にもビタミンの補充は有用と考えます。

 

妊娠率を上げる以外にも

 

①胎内発育遅延児(SGA)のリスクを減らす。

 (Bi WG et al. jamapediatrics,2018)

②がん全体に罹患するリスクを下げる。

(Sanjeev Budhathoki et.al.,BMJ,2018)

③精子の運動能力を高め、受精能力を強くする。

(Martin Blomberg Jensen et.al. Human Reproduction,2016)

などの有益であるとする報告を多く認めております。

 

ビタミンDの補正は

・検査が簡単(採血だけ。時期もいつでも良い。)

・治療が簡単(サプリ飲むだけ)

・効果が高い

・副作用ほとんどなし(過剰になりにくい)

と4拍子揃ったとても良い検査・治療です。

 

うまくいかなかった場合に勧めていますが、できるだけ早く妊娠していただきたいため積極的に行いたいです。

ご希望の患者様はいつでもお伝えください。

下記のブログはビタミンDの検査と補充についてです。

不妊治療のビタミンD での治療~サプリはいつ飲む?摂取量は?いつまで?~

 

院長 菊池 卓

 

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