肥満は胚移植後の流産率を上げます。

 

流産は非常に悲しいものです。

妊娠した喜びの後に

悲しみに包まれるためよりつらいです。

 

以前より肥満女性の方は流産率が高いことが知られていました。

ただ、その原因が

・受精卵の質を低下させるのか

・子宮環境に悪さをするのか

わかってはおりませんでした。

 

下記の論文は正常胚を移植した方の流産率を

BMI(肥満度)別に比較したものです。

 

 

対象は正常胚を移植した3480周期。

BMI(肥満度)別で流産率を比較しております。

 

・低体重  BMI 18.5未満 155周期 

・通常体重 BMI 18.5~24.9 2549周期

・太り気味 BMI 25~29.9 591周期

・肥満   BMI 30以上 185周期

 

※BMIだとわかりにくいので体重にしますと

20~40歳の日本人女性の平均身長が約158cmですので

その場合のBMI30の方の体重は74.8kgです。

 

結果です。

BMI30以上の方は有意に流産率が高かったです。

 

 

妊娠率は変わりませんでしたが

流産率が高いため

生産率は有意に低かったです。

 

 

グラフにはありませんが採卵1回当たりの正常胚の獲得数は

有意差はありませんでした。

 

以上から筆者らは肥満の方が流産率が高い原因としては

子宮環境に悪影響を与えていることが

原因と推測しております。

 

他の流産後の胎児絨毛染色体検査を調べた報告でも

肥満の方は正常胚でも流産しやすいことが

報告されております。

 

冒頭にも書きましたが、流産はできる限り避けたいです。

流産された患者様の涙を見るのは

私もとてもつらいです。

 

さらに肥満は妊娠中の合併症

・妊娠糖尿病

・妊娠高血圧症候群

などを増加させます。

 

そのため今後の当院のBMI 30以上の患者様の治療方針ですが

・タイミング・人工授精をご希望の患者様については

減量後治療開始させていただきます。

 

・体外受精をご希望の患者様については

採卵は通常通り行わせていただき

胚移植は減量後に行わせていただきます。

 

体重を減らすことは大変なことでありますが

流産を避け、安全な妊娠生活を送るために

お願いいたします。

 

院長 菊池 卓