ホルモン補充周期での妊娠初期の出血は流産率を上げない
ホルモン補充周期で無事妊娠された患者様より
「出血があります。流産しないか心配です」
と良くご質問されます。
今回ご紹介するのは
ホルモン補充周期で妊娠された方のその後の妊娠転帰を調べた論文です。
コホート研究の部分のみ抜粋してご紹介します。
対象はホルモン補充で胚移植され、妊娠検査薬+の320人。
前向きコホート研究です。
結果です。
47%の方が妊娠8週までに出血を経験していました。
妊娠継続率は出血ありが71%(106/149)、出血無しが67%(115/171)。有意差はありませんでした。
私の妊娠時の出血の考えです。
「安定期」という言葉があります。
胎盤が発育して完成する
妊娠16週以降を指すことが多いです。
赤ちゃんとお母さんをつなぐ胎盤(絨毛)は血管の塊です。
まだ、完成する前の血管は細いため
ちょっとしたことで切れやすく
それが出血の原因になります。
私が患者様に伝えているのが田んぼの稲のイメージです。
植えたばかりの稲はまだ地面に根をしっかりと生やしていないため
ちょっとしたことで抜けてしまいます。
それが十分に育つと、しっかり根を生やし抜けなくなり、「安定」します。
稲を1日ですぐに成熟させることは現代の技術でもできません。
同じく胎盤(絨毛)をすぐに成熟されることはできず
発育をじっと待つしかありません。
流産の主な原因は
胎児の偶発的な染色体異常です。その詳細はこちらを
今回ご紹介した論文にもありましたが
私自身の印象としても
妊娠初期の出血と流産には因果関係は無いと思います。
トランサミンなどの止血剤や子宮収縮抑制剤も
流産予防の効果は無いことが示されております。
妊娠初期の出血は不安しか無いと思います。
ただ、それは流産とは無関係です。
今日も1日赤ちゃんと胎盤は成熟しています。
赤ちゃんを信じて待ちましょう。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。