妊娠したらサプリメントは続けますか?~ラクトフェリン~

今回はラクトフェリンについてです。

 

結論から言いますと

ラクトフェリンの内服は

切迫早産の予防に有用ですので

ぜひ継続して下さい。

 

そもそもラクトフェリンは何かといいますと

母乳や子宮頸管の粘液に含まれる

糖タンパクです。

元々、母体から分泌されているものですので

安全です。

 

作用ですが、善玉菌を増やし

悪玉菌を減らします。

 

ラクトフェリンはフェリンと名前がつくように

鉄を奪い去る作用があります。

大腸菌などの悪玉菌は発育に鉄を必要とします。

それに対して善玉菌である

ラクトバチルスは鉄を必要としないため

ラクトフェリンを投与することにより

ラクトバチルスのみが存在しやすい環境を

整えてあげることができます。

 

上のイラストですと土壌の環境を整える

肥料にあたると考えて下さい。

 

赤ちゃんが最初に飲む初乳にも

ラクトフェリンは特に多く含まれており

赤ちゃんを守るよう働いています。

 

不妊症の患者様に対して

子宮内フローラの改善が有用であることは

以前記事にしました。

 

慢性子宮内膜炎、子宮内フローラの当院の治療 ~抗生剤はピンポイントで~

 

無事妊娠された後も

悪玉菌が増えて

子宮内感染→切迫早産→早産になる

危険性があります。

 

そのためラクトフェリンは

妊娠中も継続して下さい。

 

そして、そもそも切迫早産になると

なぜ駄目なのですかとご質問を

受けることがあります。

 

ざっくりいいますと

人間は妊娠40週0日に

およそ3kgの赤ちゃんを分娩します。

 

妊娠28週で約1kg、30週で約1.5kgに

発育しますが、早産になってしまうと

まだ臓器が未熟なため

頭蓋内出血や呼吸不全などの

新生児合併症を引き起こしたり

NICU(新生児集中治療室)に入る必要がでてきます。

 

特に呼吸をする肺の成熟には

時間を要するため

人工呼吸管理は必要になることが多いです。

 

そのため、産科ではいかに早産を防ぐかが

大事になってきます。

 

私が総合病院で産科をしていた時代から

月日は流れましたので、

現在はより良く進化していると思いますが、

当時は切迫早産であり、入院が必要と判断されると

妊娠36週まで入院していました。

 

妊娠24週に診断されると、

12週間、約3ヶ月入院しています。

子宮の張りを抑える点滴を24時間しており

1日1回膣洗浄をしておりました。

そして安静が大事なので、

ベットの上にずっといます。

シャワーやトイレの時のみ

移動が許可されます。

 

個室もありましたが、個室料がかかるため

4人部屋で入院される方が多かったです。

点滴に縛られ、ベットの上にいる共同生活が

月単位で続きます。

皆様頑張られていましたが、

とてもつらかったと思います。

 

切迫早産になるととても大変なため

できるだけ予防が大事です。

切迫早産は様々な原因でなりますが

子宮内感染も大きな原因です。

 

下記の論文はケースレポートになりますが

ラクトフェリンにより

切迫早産の予防になるという論文です。

対象は早産を繰り返し、生児を得られない

難治性の細菌性膣炎の患者さん6名です。

腟分泌検査を行い、ラクトバチルスがいないことを

確認しております。

 

妊娠前ないし切迫早産の徴候が明らかになる前に

ラクトフェリン700mg/日内服、(内2名は腟内投与も併用)。

ラクトフェリン開始後1~3ヶ月で腟内細菌の改善を認め

1例は30週6日で分娩しましたが、

残りの5例は妊娠35週以降まで、

妊娠が継続でき、分娩に至っています。

 

できるだけ早産は防ぎたいですし、

快適な妊娠生活を送るためにも

腟および子宮内の細菌環境を整えることは

重要であると考えます。

 

以前ご紹介しました葉酸、ビタミンDと比較しますと

エビデンスレベルは下がりますが

この2つは切迫早産の予防はできないため

選択肢の1つに入れてもいいかと思います。

 

院長 菊池 卓

—–