採卵後の凍結胚移植はお休み期間があるほうが良いのか ~ホルモン補充周期において~
妊娠率をより高くするために、採卵後に受精卵(胚)を凍結し
翌月以降に胚移植を行うことが近年の主流になっています
移植の時期については下記の2パターンあり
・採卵の翌月にすぐに行う
・採卵の翌々月以降(1-3か月待つ)に行う
クリニックにより違います。
当院では1か月待ってから行っています。
ただどちらが良いかは意見が分かれるところであり、それに対してランダム下試験を行ったのがこの論文です。
ホルモン補充周期にて凍結融解胚移植を行った724人が対象
ランダムにどちらかのグループに割り振りました。
・採卵翌月に移植(Immediate group)
・採卵翌々月以降に移植(Delayed group)
結果です。
生産率(47.2% vs 37.7%)及び流産率(13.2% vs 24.2%)と
共に翌月すぐに胚移植を行ったほうが有意に良かったです。
著者らはこの結果について
明確な理由はわからないが、待つことによるストレスが影響しているのではと考察しております。
また、この研究の限界点として
・ランダム化したものの、翌々月以降移植群は1歳平均年齢が高かった。(30.0歳 vs 31.0歳)
・ホルモン補充周期のみであり、自然(排卵)周期は不明であること
・2個胚移植も行っており、多胎率が20%以上と高かったこと
などを挙げております。
私の意見です。
最初にこの論文の要約を読んだときに
悩んでいたことの解決になるかと喜んでいたのですが
待っているストレスが原因かもといわれると
・・・という感じです。
ストレスレベルも今回の研究では測定していないので、不明ということですし。
ただ、少なくともホルモン補充については
採卵翌月に移植しても成績は変わらないという報告は
世界でも日本でも多くあります。
患者様の多くは早く移植されることを希望されておりますし
これからはホルモン補充に関しては
採卵翌月に胚移植を計画していきます。
ただ、自然(排卵)周期については
生理周期が不安定になることが多い印象があるため
これまで通り1か月のお休み期間を設けるつもりです。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。