ベストな胚移植の位置は? ~日本人と西洋人との子宮の大きさの違い~
胚移植は体外受精の集大成の手技であり
妊娠成績に直結する重要な手技です。
妊娠率を上げるために様々な工夫を
しているのですが
胚(受精卵)を子宮のどこに移植するかは
大事なポイントです。
下記のイラストの移植胚を
もっと子宮の奥のほうにいれるのか
手前がいいのか
真ん中がいいのか
mm単位でどこに移植するかを
患者様ごとに検討しております。
子宮底部から10~20mmに
胚を移植した方がよいという
有名な海外の論文があります。
実際にそうするクリニックも多いと思いますし
私もそうした時期があります。
ただ、日本人と西洋人の人種差の違いがあるため
胚は子宮底部の6~10mmに移植したほうが良い
とする報告が下記の論文です。
神戸にある英ウイメンズクリニック様の論文です。
良好胚盤胞の938周期を対象。
全例経腟超音波下に移植しています。
移植の時に見える気泡(Air bubble)が
見える位置で妊娠率を比較しています。
気泡とは下記の子宮のエコーに写っている
白い点です。
この白い点のところに胚があります。
気泡(Air bubble)が見える位置と
妊娠率の相関関係のグラフです。
子宮底部から6~10mmの位置に気泡が見えると
妊娠率が高いとする結果でした。
この論文では他にも
・子宮内膜は10mm以上の方が良い
・医師の移植手技の自己評価は妊娠率に関係ない
(移植にもたついてしまい、医師があまり良い移植では無かったと思っていても、気泡の位置が良ければ妊娠率は下がらない)
ことも報告しております。
筆者らは従来よりも子宮底部に近い位置のほうが
妊娠率が高くなったことについて
・日本人の子宮の大きさが西洋人と比較して小さいこと
が関係しているのではと指摘しています。
実際に子宮のエコーをみていると
子宮のサイズは皆同じではありません。
10-20mmで特に15~20mmなどにすると
かなり手前に移植することになる
患者様もいます。
どうしても海外の論文の方が
患者数も多く、論文デザインも良いため
日本の論文よりも評価されやすいです。
ただ実際は移植方法も違い
全てを同じように考えると
結果が違ってきてしまいます。
・海外は経腹超音波が主流
・当院は経腟超音波、この論文も経腟
違いは下記の記事を参照ください。
胚移植について 経腟の方が経腹よりも不快感が少ない
当院では何mmとは決めずに
子宮内膜の最も厚くみえるところに
移植をしております。
より良い胚移植を目指していきます。
院長 菊池 卓
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静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。