ルテウムとルティナスの違いは?ホルモン補充周期の凍結胚移植において
凍結胚移植の黄体補充で使用する腟剤は下記の4種類があります。
・ルティナス
・ウトロゲスタン
・ルテウム
・ワンクリノン
この中で当院では
ルティナスとルテウムの2つを採用し
患者様ごとに種類を変えております。
理由ですが、下記の論文を参考にしました。
絹谷ウイメンズクリニック様からの報告です。
前向きの無作為の比較試験で
対象はホルモン補充での胚移植を行った235周期です。
・ルティナス(100mg)を1日3回投与
・ウトロゲスタン(200mg)を1日3回投与
・ルテウム(400mg)を1日2回投与
・ワンクリノン(90mg)を1日1回投与
胚移植日の血清P4の値を測定。
P4の値ごとの妊娠率や生産率を比較検討しております。
※製剤ごとの妊娠率の比較ではありません。
結果です。
ルテウムとルティナスが有意に胚移植日の血清P4の値が高かったです。
しかし、妊娠率や生産率はP4の値で有意差はありませんでした。
私の意見になりますが
今回の論文では血清P4の値と妊娠率などに相関はありませんでしたが
関係あるという論文もあります。
費用は4種類ともほぼ同じということもあり
どうせならP4が高いほうが良いと考え
ルティナスないしルテウムを使用しております。
ではこの2つの違いです。
体内での溶け方と保管方法が違います。
・ルティナス
腟の中の水分で発泡して溶けます。
イメージでいうと入浴剤のバブです。
なので常温で保存が可能。
溶けた後のおりものもさらっとしていて、かゆくないです。
欠点としては
・内服や注射を併用しない場合、1日3回の投与が必要であること
・腟の潤いが少ない時は溶けにくくなります。
・ルテウム
油脂で固めてあり、体温で溶けます。
イメージで言うとバターです。
なので冷所(1~25℃)での保管が必要です。
温度で溶けるので、腟の潤いが関係ありません。
1日2回の投与です。
欠点としては
・油脂成分なのでおりものがかゆくなる患者様もいます。
・冷所保存が必要です。
基本的にはどちらを選んでも変わりはありません。
あとは常温保存のルティナスか
1日2回のルテウムかなどを
より扱いやすいほうを選んでいきます。
患者様ごとの相性も強く感じる薬の1つですので
気になる点がありましたら診療時にご相談ください。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。