顕微授精になると息子の精子に悪い影響をあたえますか?

 

上記はある男性の精液濃度を定期的に調べたものですが

何も治療をしなくても精液所見はよく変わります。(この男性も治療などはしていません)

2億匹を超えているときもあれば、500万程度の時もあります。

 

採卵日に精液を持ってきていただくのですが

思いもかけず悪い時もあります。

その場合は顕微授精を行うことを提案するのですが

ご主人より「以前ネットで顕微授精になると息子の精子が少なくなるという記事を見たので心配」

とご質問を受けるときがあります。

 

今回ご紹介する論文は

顕微授精で生まれた男の子の精液所見は

ART(体外受精・顕微授精)無し≒自然妊娠で生まれた男の子と差が無いことを報告しております。

 

 

対象は不妊治療で生まれた18-25歳の男性。

ART無しで生まれた男性356人

ARTで生まれた男性120人

で比較対象しており、さらにARTは

・重度の造精機能障害(STF)(精液所見がかなり悪い)で顕微授精

・閉塞性障害(主に精管切除)(精液所見問題なし)で顕微授精

でグループを分けて検討しております。

※精管切除の補足

お子さんを十分に授かり、その後挙児希望ないため永久避妊目的で精管を切除した。

しかし、その後さらなるお子さんが欲しくなり、顕微授精で妊娠されたという患者様はそれなりにおります。

 

結果です。

最初にARTありと無しで比較しています。

 

 

主要評価項目である高度乏精子症(精子濃度500万/mL未満)に有意差はありませんでした。(あり9.0% vs 無し5.3%)

 

他のパロメーターも比較していますが

精子濃度、総精子数、総運動量は同等。

ARTありが前進運動率が低いものの、正常形態率は高かったです。

 

次に重度の造精機能障害(STF)≒精液所見が悪いと

閉塞性障害≒精液所見が正常のサブグループについてです。

 

 

STFと閉塞性障害のグループ間に有意な差はありませんでした。

精液所見の結果は関係ないことになります。

また、この表にはありませんがARTなしとこのサブグループを比較しても

ARTあり、無しと同様の結果であったと報告しております。

 

筆者らは結論として

お父さんが重度の造精機能障害であっても

体外受精や顕微授精で生まれても

生まれてくる男の子の精液所見はARTなし≒自然妊娠と変わらないとしています。

 

 

私の意見です。

採卵時の精液所見が悪かった時に

ご主人がご自身を責めている姿をよく見かけます。

 

奥様が日々自己注射や通院を頑張られ

採卵の痛みに耐えているのに

なぜこの大事な時にとご自身を責められていると推測しております。

 

ただ、これはどうしても運、不運がつきものです。

体外受精(採卵)前の禁欲期間のベストは?

精子力を高めるためにできること

上記の事をしていただいてもうまくいかないときはあります。

 

現代の顕微授精は技術が進み、成績が向上しております。

生まれてくるお子さんの精子に悪い影響は与えません。

どうか気落ちせず、明日からの奥様のサポートを引き続きお願いいたします。

 

院長 菊池 卓