体外受精(採卵)前の禁欲期間のベストは?
体外受精(採卵)前の禁欲期間は精液検査が正常な方は2~4日、乏精子症(精子が少なめ)な方は1日がベストです。
体外受精(採卵)前の禁欲期間の数え方ですが、採卵日を0日として前日が1日です。
禁欲期間は長ければ長いほど
精子は貯めれば貯めるほど
良いと思われがちですが、決してそんなことはありません。
理由を説明します。
精子は精巣で作られ、精巣上体で保存されています。
射精しないで禁欲していると、古い精子が溜まってしまい
精子全体の質の低下を引き起こします。
精子は生ものです。
常に新鮮な精子が精巣上体に満たされているようにしましょう。
精子は卵子と違い毎日作られています。
なくなりませんので安心して射精してください。
このことを裏付ける論文を2つご紹介します。
※今回は論文が2つなのでで最後にまとめて載せてあります。
まずは(1)論文から
・精子濃度2000万/ml(20×10⁶)未満を乏精子症
・それ以上を正常として禁欲期間と精液所見の関係を調べました。
6,008名から9,489検体を調べています。
禁欲期間が長くなるにつれ正常では精子濃度、総精子数は高まる傾向にあります。
しかし、乏精子症患者では精子濃度にはその傾向が見られません。
また、運動率も同様に比較したところ正常所見では8日以上で低下
乏精子症患者では1日が最も良く
徐々に低下する傾向が見られました。
こんな論文(2)もあります。
1030周期の体外受精を禁欲期間によって
・グループⅠは2~7日
・グループⅡは7日以上として
生児出産率、着床率、妊娠率を比較しています。
全項目で禁欲期間2~7日のグループⅠの方が有意差をもって良い結果でした。
さらにグループⅠを更に2~4日と5~7日に分けて検討したところ
出産率が2~4日では36.1%、7日以上では24.1%と
有意差をもって2~4日の方が良い結果が得られました。
この2つの論文をまとめると
一般的に禁欲期間は2~7日とされていますが、
生児出産率、妊娠率から2~4日が良い考えます。
乏精子症の場合には、日数が経過しても濃度はあまり変化せず、運動率は低下していくため
禁欲期間は1日が良いでしょう。
クリニックで補助できる精子判別法については下記を
(1)Fertil Steril. 2005 Jun;83(6):1680-1686
(2)Fertil Steril. 2017 Dec;108(6):988-992
精子の量と運動率を増やす対策については以前の記事を参照ください。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。