採卵の刺激法~卵胞の大きさは不揃い(バラバラ)でも問題ありません~
これから初めての採卵を開始予定の患者様達より
『私は何法で採卵するのですか?』とのご質問を受けます。
アンタゴニスト法やショート法など言葉は聞いたことがあるけれど
なかなかイメージはわきにくいものだと思います。
表題について私なりの解釈で説明させていただきます。
※わかりやすさ最優先で書きますので、
・下垂体抑制が~などの機序は書きません。
・細かい言葉が厳密な意味で違うこともあるかもしれません。
上記2点についてご容赦いただければ幸いです。
結論から言いますと
AMHが0.8~4ng/mL程度で、凍結を希望される患者様は
いずれの方法でも大きな変わりはありません。
そもそもなぜ注射をするかといえば
1回の採卵で沢山卵子を獲得したいからです。
1個だけでは受精すらしないかもしれないため、5~15個は欲しいです。
そのためにFSHやhMGなどの注射をして卵胞をたくさん育てます。
これは3つの方法で共通です。
下記は卵胞を発育させる注射フェリング(hMG)です。
しかし、フェリングだけで採卵を計画すると
最終的に10~15%程度の方がうまくいきません。
・採卵日前に排卵してしまったり
・未熟卵ないし空胞が多い
といった悲しい結果になってしまいます。
なぜかといいますと
下記の写真のように卵胞(黒い球体)の大きさが不揃い(バラバラ)だからです。
これは程度の差はあれ、どの患者様も同じです。
※大きい卵胞を刺すと60~80%程度で成熟卵子が回収できますが
小さい卵胞だと成熟卵子の回収率がもっと下がります。
大きい卵胞が排卵しないように
早めに採卵すると小さい卵胞が未熟卵や空胞に
小さい卵胞が大きくなるのを待っていると。
大きい卵胞が排卵してしまいます。
そうしたことを防ぐために
小さい卵胞が大きくなるまで、大きい卵胞が排卵しないようにするために
アンタゴニスト法ではセトロタイドを
PPOS法ではデュファストンを
ショート法ではブセレキュア点鼻薬を
それぞれ使用します。
いずれの方法でも排卵を抑えることが出来ますので
卵胞が不揃い(バラバラ)でも問題ありませんし
狙って卵胞の大きさを揃えることも出来ません。
※採卵前の周期にピルを内服しても意味はないと考えます。
もちろん細かい点では3つの方法は違いがあり
・新鮮胚移植(採卵後すぐの移植)を希望されるか
・自己注射はしていただけるのか
・卵巣過剰刺激症候群になりやすいか
などの患者様の状態を状態を考慮して最適と思われるものを選択しているのですが
基本的には大きな違いはないものだとご理解ください。
違いについてご質問がありましたら診療の際にいつでもご質問ください。
採卵につきましては下記のブログもご参照ください。
採卵(体外受精)の痛みを減らすための工夫 ~2段針と静脈麻酔の使用~
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。