ホルモン補充凍結胚移植のスケジュールは?~移植日の曜日は選べます~
以前凍結胚移植のスケジュールについてご説明しました。
詳細は下記のブログを
凍結胚移植周期 説明編 ~自然周期 vs ホルモン補充周期~
その中でホルモン補充周期のメリットとして
・胚移植前の内膜厚確認のための診察
・胚移植日
・判定日
を患者様のご希望の曜日にできますとお伝えしているのですが
今回はもっと具体的に説明します。
生理開始2-3日目からエストロゲン(エストラーナテープないしジュリナ)を開始。
開始して17~21日後に移植。
その6~8日前に診察です。
ただ、これだとイメージが付きにくいのでカレンダーに書きます。
5月1日(土)の朝に生理が開始したとします。
※生理開始日をピルで調整することも可能です
5月2日(生理2日目)から薬スタート。
ここで胚移植日を選んでいただくのですが、いつでもいいわけではなく
◎が推奨、〇は可能、×はお勧めしないです。
長すぎるないし短すぎる周期は出産率が落ちるからです。
説明させていただきます。
まずは長すぎる周期が良くないことを報告した論文から
ホルモン補充にて凍結融解胚移植を行った1377周期が対象
胚移植前までのエストロゲン補充の投与期間別に4群に分けております。
結果ですが、エストロゲン補充が21日以内を基準としており
29日を超えると有意に生児出産率の低下を認めております。
22~28日でも有意差はないものの若干の生産率の低下を来しており
また薬の投与期間の延長に伴う金銭面及び肉体的な負担を減らすため
当院では基本的に21日以内に胚移植を行うようにしております。
次に短すぎる周期についてご説明します。
論文を見つけられず、ASRM(米国生殖医学会)の学会抄録からです。
最初の凍結胚移植を受けた5063人が対象。
全てPGT-Aを受けており、正常胚です。
エストロゲン製剤開始からプロゲステロン製剤開始までの日数で胚移植当たりの妊娠8週での胎児心拍陽性率を比較しております。
8日以下でプロゲストロン製剤を開始した202人は
胎児心拍率が53.9%と有意に低い結果でした。
また私個人の経験の話ですが
患者様としては薬の投与期間を短くするために
『開始14日目の土曜日に移植したいです』と
希望され計画した時もあるのですが
うまくいかない印象が強いです。
妊娠しない次の周期に
通常通りの17~21日後に胚移植を行い
妊娠された患者様を複数人経験したため
根拠の強い論文が出ない限りこれは行わないつもりです。
最後になりますが、推奨の◎のどこで胚移植を行っても妊娠率・生産率は変わりません。
ご希望の日を選んでいただければ幸いです。
移植後の妊娠判定の詳細は下記の記事を
ホルモン補充と自然周期の妊娠率の比較は下記の記事を
下記の記事も参照ください。
ルトラールとデュファストンの違いは?~ホルモン補充での使い分け方~
ヒアルロン酸含有胚移植用培養液は妊娠率と出産率を上昇させます。
ベストな胚移植の位置は? ~日本人と西洋人との子宮の大きさの違い~
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。