凍結胚(胚盤胞)移植のスケジュールと妊娠率のまとめ ~当院の方法別の成績もご紹介~

 

凍結胚移植にはホルモン補充と自然がある

凍結胚(受精卵)を移植をするときには

子宮のホルモン状態を整えて

ベストな状態で移植をする必要があります。

 

下記のように2種類の方法

ホルモン補充周期(排卵はさせずに薬のみで整える)

自然排卵周期(排卵誘発剤の併用も含めて)

があり、どちらかを選びます。

 

ホルモン補充周期

方法

卵胞発育をあえてさせず

薬(飲み薬や貼り薬、腟に入れる薬など)を使い

子宮にホルモンを届けます。

薬を投与していると卵胞は育たなくなるので、

自分の中からホルモンが出なくなります。

 

そのことを利用し、薬の開始日を調節すれば

移植日をある程度選べるようになります。

スケジュール

 

 

わかりやすくカレンダーにすると

 

 

自然周期

方法

自然周期は自然に排卵した時に

出てくるホルモンを使います。

自分の体の中からホルモンが出るため

薬の投与が最小限になり、煩わしくないです。

ただ、移植日や診察日を患者様の

仕事の都合で決めれません。

全て子宮と卵巣の都合で決まります。

 

スケジュール

自然周期のスケジュールは下記のイラストの通りです。

 

費用面での比較

基本的に薬の多いホルモン補充の方が高いのですが

保険になったため、費用の差は縮まりました。

およそ2万円程度違います。

 

 

妊娠率と流産率の比較

では、妊娠率はどれくらい変わるのでしょうか

添付文書では

2022年3月以降のエストラーナテープ及びジュリナの添付文書には

『ホルモン補充周期で凍結融解胚移植を行った場合は、自然排卵周期で凍結融解胚移植を行った場合と比べて、妊娠率や生産率が低下する可能性がある

と記載されています。

 

ガイドラインでは

生殖医療ガイドラインでは

 

 

上記の3815人の女性からなる18件のRCTを対象とした、ホルモン補充と自然排卵周期において差を示す証拠はなかったとする

コクランレビューなどを元に

妊娠率と出生率において同等であると記載しております。

 

菊池レディースクリニックでは

では、当院ではどうでしょうか

当院で治療してくださる患者様にとっては

それが一番気になるところだと思います。

 

当院のデータで比較しました。

2021年1~12月に当院で凍結胚盤胞移植を行った199周期。

胚盤胞のグレード及び移植個数の要因を減らすため

3BB以上の良好胚盤胞の単一胚盤胞移植としています。

※2個胚移植、2段階移植は除外。

※PGTA-Aもしておりません。

 

妊娠率は子宮内に胎嚢がみえた場合を妊娠とし

流産率は当院を卒業後も流産の報告があり次第、流産としております。

 

結果です。

結論からお伝えしますと

当院では妊娠率も流産率も有意差ありませんでした。

 

まずは全体のデータから

 

 

全体での妊娠率の比較

ホルモン補充の妊娠率は67.2%( 80/119 )

自然の妊娠率は57.5%( 46/80 )

 

全体での流産率の比較

ホルモン補充の流産率は16.3%( 13/80 )

自然の流産率は10.9%( 5/46 )

 

 

年齢別の妊娠率の比較(ホルモン補充)

~34歳 80.6%( 54/67 )

35~39歳 53.8%( 21/39 )

40~42歳 37.5%( 3/8 )

43歳~  40.0%( 2/5 )

 

年齢別の流産率の比較(ホルモン補充)

~ 34歳 9.3%( 5/54 )

35~39歳 28.6%( 6/21 )

40~42歳 33.3%( 1/3 )

43歳~  50.0%( 1/2 )

 

 

年齢別の妊娠率の比較(自然)

~ 34歳 73.7%( 28/38 )

35~39歳 51.7%( 15/29 )

40~42歳 25.0%( 2/8 )

43歳~  20.0%( 1/5 )

 

年齢別の流産率の比較(自然)

~ 34歳 3.6%( 1/28 )

35~39歳 20.0%( 3/15 )

40~42歳 50.0%( 1/2 )

43歳~  0.0%( 0/1 )

 

スケジュール調整に優れるホルモン補充

薬の煩わしさが少ない自然周期

ホルモン補充と自然周期は

一長一短だと思います。

 

肝心な治療成績については

自然の方が良いとする添付文書と

どちらでも変わらないとするガイドライン

の2つの意見がありますが

当院ではどちらでも変わりませんでした。

 

患者様のご希望と体質を考え

最適な治療方法を提案させていただきます。

 

初期胚なども含めました当院の全体での治療成績は下記のブログを参照ください。

菊池レディースクリニック2021年の治療成績・実績 

 

院長 菊池 卓