ERA検査(着床の窓)を初回胚移植の前に行う意味はないのか?

 

ERA検査の概要については下記の記事を参照ください。

着床不全の方もERA検査(着床の窓のずれ)は必要ない。

 

患者様より時折『最初にERA検査をする意味はありますか』と尋ねられます。

『ERA検査は高額で時間もかかるため、最初からは行いません。』

とお答えしておりましたが、根拠となる論文がありませんでした。

 

今回ご紹介する論文はERA検査を初回胚移植の前に行っても生産率は変わらないという論文です。

 

 

対象はホルモン補充周期下に正常胚を単一胚移植した初回の228周期

患者さんが希望で胚移植前にERAをするか選び

・ERAをせずに胚移植をしたNo ERA群 81人

・ERA後に胚移植をしたERA群 147人

に別れました。

 

結果です。

生産率は55.6%(45/81) vs 56.5%(83/147)と有意差はありませんでした。

他の生化学妊娠率や臨床妊娠率も有意差ありません。

 

 

さらにどれぐらいの割合で着床の窓がずれているかも調べております。

 

 

59.2%(87/147)が着床の窓がずれており

その中の93.1%がPre-Receptiveでした。

⋆通常はPre-Receptiveの結果が出ると胚移植の日時を後ろにずらします。

 

筆者らはこの研究の限界として

・ERA群が平均年齢が高いこと(34.9±3.8歳 vs 36.9±3.8歳)を上げています。

しかし、PGT-Aを行った正常胚の初回胚移植であるためその影響は少ないとコメントしています。

・また、彼らは黄体補充を腟剤のみで行うと流産率が高くなったため、途中から注射製剤をメインのプロトコールに変更しております。

 

私のコメントです。

ERA検査は以前は多くの施設で有用であるという発表も多く、私も積極的に行っておりました。

実際に効果的だと感じたこともあります。

 

ただ、多くの施設で行われるようになり

どんどん早く行われるように効果が疑問視されるようになりました。

窓のずれというものは絶対的なものでは無く

多くの患者様にとっては多少のずれというのは問題にならないのだと思います。

ここ最近はずっとそう思っていましたが、この論文を読んでさらにその思いは強くなりました。

初回の移植前に行う意味は無いと考えます。

 

ただ、それでも反復着床不全に対するオプション検査としての価値が無いわけではありません。

1.2%しかおりませんが、48時間以上のずれがあるかたなどは、効果がある可能性があります。

 

ただ、ERA検査は高額で時間もかかります。

今まで以上にしっかりと患者様に

説明していきたいと思います。

 

院長 菊池 卓