分割(初期)胚にも良さがある。

続きです。

分割胚(初期胚) vs 胚盤胞 ~どちらで凍結するのがいいのか~

 

分割胚には分割胚の良さがあります。

できるだけ早く

お母さんの子宮に戻すことが

メリットになります。

 

高刺激で沢山卵子を回収→胚盤胞を凍結→

胚移植→妊娠せず

を繰り返した方が

低刺激で新鮮分割胚で

すぐに妊娠したというのは

自分の経験として何回もあります。

 

ただ、自分の中の経験に留まっており、

体外培養と体内培養の

どちらが優れているのかは

なかなか比較することができないため

わからないままでした。

 

それを行ったのが下記の論文です。

 

 

卵巣刺激を行い

・通常の体外受精をした胚盤胞の群と

・人工授精を行い、子宮を洗浄して胚盤胞を回収した群

を比較しています。

 

子宮内を洗浄してお母さんの卵管と子宮で育った

胚盤胞を回収するという、

正直想像もできない手法を行っており、

この論文が出たときには衝撃を受けました。

 

洗浄の器具です。(論文より抜粋)

 

 

洗浄をして胚盤胞を回収しているエコー画像。

 

 

比較の対象は

・胚盤胞の遺伝子の正常率

・胚盤胞の形がきれいかどうか

を比較しております。

 

遺伝子の正常率

体外 51% vs 体内(人工授精) 54%

と有意差はありませんでした。

 

ただ胚盤胞の形については

同じ女性で両方を行った20周期において

良好胚盤胞(形がきれい)は

体外 43.3% vs 体内(人工授精) 68.1~71.2%

(見た目は主観的な指標のため平均的になるよう複数の培養士が判定)

と体内で発育した胚盤胞の方が

形はきれいという結果でした。

 

形のきれいさは妊娠率や流産率に

関与すると考えられます。

 

また、胚盤胞まで育たない方に

胚盤胞培養をこだわっていると

いつまでも移植が

できなくなってしまいます。

 

獲得卵子数が少ない方は

分割胚(初期胚)で戻すことを

お勧めします。

 

続きます。

卵子が多い方は胚盤胞、少なめの方は分割(初期)胚で

 

院長 菊池 卓

 

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