胚移植の子宮内膜は厚いほど妊娠率は上がりますか?

 

移植周期の診察で子宮内膜の測定をしています。

私が『子宮内膜が8mmです。いいですね。』とお伝えしても

患者様より『8mmしかないんですか。内膜は厚いほど良いと聞きました。心配です。』と

時折疑問を投げられます。

 

下記は共に卒業された患者様の子宮内膜です。

※特定されないようトリミング加工しています。

 

8mmの患者様

 

16mmの患者様

 

よく子宮内膜は受精卵のベッドに例えられるため

16mmの方がふかふかで良さそうに見えるかと思いますが

今回ご紹介する論文は

胚移植周期の子宮内膜厚と妊娠率は関係ないという論文です。

2021年のFertility and Sterilityです。

 

 

273周期の新鮮胚移植、287周期の凍結融解周期 計560周期が対象。

子宮内膜の厚さは関係なく移植されております。

※子宮内膜の病変がある方のみ除外

生児出産率および流産率が評価項目です。

 

 

上記はmmで層別化した子宮内膜の厚さの

新鮮胚および凍結胚の出産率と流産率を示したものです。

 

子宮内膜の厚さは生児出産の予測因子にはならないと結論されました。

数は少ないですが、内膜が5mmでも妊娠されています。

子宮内膜が15mm、13mmなどの10mm以上に厚い場合でも特に妊娠率が高いわけでもありません。

 

筆者らは子宮内膜が薄いという理由だけで、移植を中止にして、その方が生児を出産する可能性を否定してはいけないと結論づけています。

 

当院の胚移植を行う際の子宮内膜の基準は

下記のカナダの4万周期を対象とした論文を参考に

・新鮮胚移植なら8mm以上

・凍結胚移植なら7mm以上

にしています。

 

 

冒頭の論文だけで子宮内膜がどんなに薄くても大丈夫というのは

さすがにできませんが

少なくとも8mmあればそれ以上を求める必要はないと考えます。

内膜が厚ければ厚いほど、妊娠率が上がるものではありません。

 

ただ、それでも子宮内膜を厚くしたいというお気持ちにお答えするために、当院では対策を行っております。

こちらを参照下さい。当院ホームページの着床不全の方へのページのリンクです。

 

院長 菊池 卓