フラグメントが多く、胚盤胞まで育たない方へ ~透明帯除去培養~

フラグメントが多く、胚盤胞まで育たない方へ ~透明帯除去培養~

当院では初回の採卵で凍結できなかった場合、刺激方法や媒精方法(ふりかけor顕微授精)、精子の回収・選別方法の変更をご提案しております。しかし、そういった対応をとっても発育が改善されない場合があり患者さまにはより負担を強いることになり私たちとしても悩んでいました。

 

そんな中、2020年5月に鳥取県米子市のミオ・ファティリティ・クリニック様が発表された“透明帯除去培養”という新しい培養方法が発育不良で悩まれている方への効果的な治療法になるかもしれません

 

背景

タイムラプスによる観察で、卵細胞質と透明帯との間に“癒着”がある場合、その癒着により受精卵が分割する際に細胞の欠片(フラグメンテーション、以下フラグ)を発生させ、その結果胚の発育不良が生じている原因の1つになっていることがわかりました。

 

以下のようなイメージです。

癒着によって引っ張られフラグが発生します。

 

この発見によって考案されたのが透明帯除去培養です。“癒着”を人為的に断ち切ることでフラグの発生を抑え胚の発育を改善させるために行います。

方法

高張液に受精卵を浸しつながりが見られた卵の透明帯の一部にレーザーをあて除去します。(高張液やレーザーは通常の体外受精操作に用いられるものを使用します。)
除去した部分から細胞膜と透明帯との間に培養液を吹きかけ癒着を完全に断ち、透明帯が全くない状態で培養を行います。


 

実際にこの方法によって、これまで複数回採卵を行っても胚盤胞に発育しなかった方が胚盤胞まで発育し胚移植を行って妊娠・出産に至ったという結果が得られています。

 


当院でも透明帯除去培養が行えます

この発表以降、当院でも同じように悩まれている方へ向けて同様の治療が行えるように準備を進めておりました。

対象

受精卵の分割時にフラグが多く発生することで胚の発育不良が起きている方が対象となります。発育不良の原因が他にあると考えられる場合(フラグが少ない)には対象になりません。

注意点

“癒着を除去する”操作であるため、高度な技術が必要です。

慎重に行いますが、まれに受精卵が変性する可能性があります。

 

※自費採卵の患者様のみに行っております。

費用は最初の1つが22,000円、追加1つごとに5,000円です。

採卵周期開始時にお伝えください。

 

培養部より