胚が良い環境を維持するために ~タイムラプスインキュベーター~
当院ではタイムラプスインキュベーターを使用しております。
まず“タイムラプス”とは、一定の間隔で撮影した静止画をつなげた動画を指します。
そして“インキュベーター”とは、温度・CO2濃度・O2濃度を一定に保ち、胚の発育に適した環境をつくる機器を指します。
従来型のインキュベーターは胚の状態を観察するために毎回インキュベーターから取り出して顕微鏡で観察を行っていました。
しかし、胚にとって私たちが生活している環境は胚にとって良い環境ではありません。
そんなことから、開発されたのがタイムラプスインキュベーターです。
胚をインキュベーター内に保管したまま胚の観察ができ、
また撮影頻度は15分に一度と短いため、従来型では難しい頻繁な観察が可能です。
さらに、培養中常に動画が記録されることから、
受精の判定を確実に行い、発育の様子を切れ目なく追うことができます。
このようにタイムラプスインキュベーターは胚にとって良い環境を維持しながら、利便性に優れた機器となります。
実際に胚への影響はどうなのか、従来型とタイムラプス型を比較した論文を1つご紹介します。この論文では採卵数6個以上の患者を対象として386名の結果から検討しています。
その結果妊娠率に有意差は見られなかったものの
タイムラプスの方が高い傾向が見られました(48.6%vs41.3%)。
受精2日目のグレード(見た目の評価)の高い胚の割合は
タイムラプスの方が高い成績が得られました
(40.4%vs35.2% 有意差あり)。
以上の論文から私見です。
受精2日目の時点でタイムラプスの方が良い成績が得られたことから
胚盤胞(受精5、6日目)まで培養を継続することでより結果に差が生じるのではないかと思います。
また着床率には有意差がない、との結果でしたがタイムラプスによって良好胚盤胞を多く得ることで見た目の評価だけではなく、発育の様子からも移植胚を選択できるメリットがあると考えます。
培養部より
—–静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。