着床不全の方もERA検査(着床の窓のずれ)は必要ない。
ERA検査とは
「着床の窓」という概念があります。
子宮内膜が胚を受け入れる期間は決まっており
「着床の窓」が開いていないと胚を移植しても着床しないというものです。
胚盤胞を移植するときには
排卵日ないし黄体ホルモン投与から5日後が良いとされ
当院でも基本的に5日後に胚盤胞移植を行っております。
近年、反復着床不全の方は
この「着床の窓」がずれているのではと
スペインのグループより提唱されました。
そのずれをみるのが、ERA検査(子宮内膜着床能検査)です。
ERA検査での窓がずれている割合は
ERA検査を行うと着床の窓がずれている割合は約60%です。
ずれている場合はいつもより遅く(例えば12時間後)の移植を推奨になる場合が多いです。
※論分により多少の差はあります。
ERAをしても妊娠率は変わらず
初回胚移植の場合
ERA検査をしてもしなくても、妊娠率や流産率、生産率は変わりませんでした。
初回のPGT-Aでの正常胚の移植をするときにERA検査が必要かどうかを調べた報告からです。
詳細は下記の記事を参照ください。
ERA検査(着床の窓)を初回胚移植の前に行う意味はないのか?
着床不全の場合
胚移植を複数回失敗した着床不全の方でもERA検査の必要性はありませんでした。
上記の論文は
PGT-A正常胚の胚移植周期の妊娠率をERA検査が上げるかどうか検討した論文です。
2022年8月号のFertil Steril
対象は
・ERA群 307周期
・ERAをしない通常の移植群 2,284周期
共に平均年齢は36.7歳
今回の移植前の平均移植失敗回数は2.4-2.5回です。
全てホルモン補充周期で正常胚を1つ移植しています。
結果です。
ERA検査をしてもしなくても、窓のずれがあってもなくても、妊娠率及び生産率に有意差はありませんでした。
胚移植当たりの妊娠率はおおむね50~60%
生産率は40~50%です。
このグラフの意味ですが
もし、窓のずれが着床しない原因になるのでしたら
移植を失敗している回数が多いほど
ずれている割合は増えるはずです。
しかし、失敗した移植回数が増えても窓のずれの割合は増えませんでした。
私の意見になりますが
ERA検査はしてもしなくても結果が変わらないと考えます。
ERA検査は費用も時間もかかるものですので
その分を再度の採卵や他の検査に
使用することを推奨します。
ERA検査は先進医療
ERA検査は保険適応と併用できる先進医療になりましたが、費用も高額であり、妊娠率及び流産率を有意に改善させないため当院では必要ないと判断しました。
厚生局に申請をしていないため、当院では先進医療で行えません。
ご理解のほどお願いいたします。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。