ベストな胚移植を目指して ~胚培養士から~

ベストな胚移植を目指して ~医師から~

医師の胚移植における基本的な考え、工夫をご紹介しました。

 

今回は胚培養士からご紹介します。

 

まず、凍結している胚を融解します。

このときに患者様のご希望に応じて、

着床しやすくなるよう、胚盤胞に対してAHAを行うこともあります。

AHAとは

詳しくは↓のブログでご紹介しています。

胚の融解から移植まで

 

 

 

次に移植用のメディウム(培養液)です。

当院ではより着床しやすくなるよう

移植専用のメディウムを使用し

さらに移植用のメディウムを2種類用意しています。

 

1つはヒアルロン酸含有メディウムです。

ヒアルロン酸は胚と子宮の接着に関わり

着床促進が期待され多くの施設で利用されています。

 

2つ目はGM-CSF含有メディウムです。

こちらはヒアルロン酸に加えて

着床に有利になるGM-CSFが含まれております。

詳しくは↓のブログでご紹介しています。

着床障害を改善するために(G-CSF、GM-CSF)~日本の報告~

着床障害を改善するために(G-CSF、GM-CSF)~海外の報告~

 

 

では、実際の移植に移ります。

オペ室で患者様のお名前を確認後

培養室内で移植胚をインキュベーターから取り出し、

ディッシュの名前の確認を行ったら

移植胚を拡大してモニターに映しています。

これは患者さまが安心・納得した治療を行うには

治療の見える化”が必要と考えていますので、

特に意識的に行っている点です。

 

右側のモニターに移植胚が映ります

 

その間、医師が子宮内腔まで外筒を進め

準備が整った時点で合図をもらいます。

 

そこから、あらかじめ別に用意しておいた

メディウムをシリンジで吸い、カテーテル内に充填します。

まずエアーを吸い、そのあとにメディウムと共に胚をゆっくりと吸っていきます。

最後に再びエアーを吸い、医師のもとへ運びます。

 

↓のようなイメージです。

 

 

 

この過程では

・胚と共に吸うメディウムとエアーの量を一定にすること

・胚をやさしく吸うこと

これらを特に意識しています。

 

また、エアー・胚・エアーとすることで

胚をしっかりと保持し、

子宮内に進んだとき

超音波画像を見て位置を把握しますが

エアーは白く見えるため

胚の位置がはっきり分かるようにしています。

 

 

そして医師がベストな位置にカテーテルを

運び、合図をもらったところで

やさしく、ゆっくりと、慎重に

胚を子宮内に置きます。

超音波画像上では胚を置いた点が白くみえます。

 

その後、

培養士は医師から外筒と内筒を受け取り

顕微鏡下で胚がカテーテル内に

残っていないことを確認します。

 

胚移植は体外で大切にお預かりしていた

胚に関わる最後の場面です。

 

移植を行うまでの患者さまの

様々な負担、不安、苦労に

良い結果で応えられるように

日々、より良い方法を模索しながら

治療にあたっています。

 

培養室より

 

—–