ベストな胚移植を目指して ~医師から~

胚(受精卵)移植は妊娠率に大きく影響します。

何回も採卵をして、やっと胚が1つ育つ方もおり

その苦労に見合うようできるだけ、

妊娠率が高くなるように胚移植を行っております。

 

基本的な考えは下記の米国生殖医学会(ASRM)

のガイドラインを参考にしています。

・がガイドラインの推奨項目です

 

・カテーテルの先端は

子宮の底から1cm超離れた部位

胚を放出するのが望ましい

イメージとしては子宮内腔の真ん中~やや手前側にいれています。

胚移植の時の子宮内膜は真ん中がくぼんで、

黒く見えます

そこかやや少し手前に入れるようにしています。

 

1cmより手前に入れた方が良いとする報告もあります。下記の記事参照ください。

子宮内膜の最も厚い所に移植しています。

 

ベストな胚移植の位置は? ~日本人と西洋人との子宮の大きさの違い~

 

・胚移植の時には超音波ガイドを用いる

当院では全例経腟超音波ガイドで行っております。

お腹に超音波を当てる『経腹』

腟から超音波を当てる『経腟』がありますが

詳細はこちらを参照ください。

 

・ソフトカテーテルを用いる

当院ではソフトでかつできるだけ細いカテーテルを使用しております。

KITAZATO社のもので

子宮の入り口まで外筒を入れ

子宮の内腔から内筒(ソフトカテーテル)を入れていきます。

内筒は3Fr(1.0mm)と非常に細く、柔らかいです。

ただ、さすがに1.0mmの内筒だけだと、

曲がっており、細い部分もある

子宮の入り口を通過できず

子宮内腔に入るまでは外筒を使用しております。

 

比較のためにボールペンを置いています。

外筒と内筒を合わせた写真です。

 

・粘液の除去をしっかりする

粘液があると胚を放出する時に邪魔になる可能性があります。

移植前に生理食塩水で十分に洗浄し、

スポイトで粘液を除去しております。

ガーゼや綿球で除去すると、

出血してしまう可能性があるため

できるだけ使わないようにしています。

・胚移植が終了したら直ちに歩行可能

『胚が落ちてくると嫌だから安静にしたい』というご要望もあります。

ただ、特に透明体開口法をした胚盤胞はくっつきやすく

よく移植前のシャーレにもくっつきます。

胚が落ちてくるとは考えにくいため、安静時間はとっておりません。

 

・胚の放出スピードについて

カテーテルを子宮の一番良い位置に置いたら、そこで胚を放出します。

ガイドラインでは、放出するスピードが測定できないため評価できないとありますが、

私としてはやはりできるだけ

優しく、ゆっくり、慎重に

胚を置いた方が良いと考えます。

培養士達と協力し、できるだけそっと置くようにしています。

 

また、ガイドラインでは良さそうに見えるけど

妊娠率を向上させない項目も上げております。

・鎮痛剤、抗生剤、漢方、鍼灸、全身麻酔、マッサージ、中国伝統医学の活用

などはASRMのガイドラインでは否定的でした。

 

胚移植は体外受精のゴールになる手技であり

非常に重要なものです。

ベストな胚移植を目指し、

これからも精進していきます。

 

院長 菊池 卓

 

 

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