流産率を減らす採卵の精子選別の工夫~特に35歳以上のご夫婦へ~

 

男性も年齢を重ねると流産率が増える

女性(母)が35歳以上で流産率は上昇しますが、男性(父)が40歳以上の時にさらに流産率は増えます。

 

 

女性(母)、男性(父)共に20歳代が最も流産率が低いのですが

赤丸の女性35歳以上、男性40歳以上ですと

流産の危険性はオッズ比6.73と高くなります。

 

精子は年齢を重ねると

数や運動率などの目に見えるものも減りますが

目に見えない質の低下(DNA損傷)も引き起こされます。

 

この図の詳細は下記の記事を

男性も高齢になると流産が増える。

女性が35歳以上から流産率が増える理由

卵子はある程度精子のDNA損傷を修復出来ますが

年齢を重ねるにつれて修復力が下がると報告されています。

精子のDNA損傷を修復しきれないことも

流産の原因の1つです。

DNA損傷の少ない精子選ぶ判別法(PICSI)

PICSI (Physiologic intracytoplasmic sperm injection)は

顕微授精の際の精子選別法で

ヒアルロン酸を用いて成熟精子を選びます。

どんなもの

精子のDNA損傷の影響を減らすための工夫として

DNA損傷の低い精子を選ぶという方法があります。

 

 

精子にも成熟度があり

成熟した精子はDNAの損傷が少ない精子であるといわれています。

成熟した精子を選ぶことで治療成績の向上が期待できます。

 

成熟した精子はヒアルロン酸に結合する性質を持つ

 

 

精子が成熟すると、精子の頭部にヒアルロン酸に結合するようになります。

この性質を利用し、ヒアルロン酸を含んだ培養液を用いることで

成熟した精子か未熟な精子かを選別し

顕微授精を行うことができます。

 

ヒアルロン酸は子宮内膜などに存在しています。

胚移植で使用する培養液にも含まれております。

 

詳細は下記の記事を

高濃度ヒアルロン酸含有胚移植用培養液は妊娠率と出産率を上昇させます。

成績

 

上記の論文は通常のICSIとPICSIの

DNA損傷率及び流産率について調べております。

2752組のカップルが参加。RCTです。

 

結果です。

まずは父親の年齢と流産について

 

 

次に母親の年齢と流産について

 

 

PICSIを行うと父親、母親共に高齢になっても、若年と同じ生児出生率を示しました。

 

筆者らはDNA損傷がある精子を避けることが上記の良い結果を生んだと説明しております。

PICSI(ヒアルロン酸を用いた精子判別法)は先進医療です

先進医療とは一言でいいますと

保険に併用できる自費のオプションです。

反復して着床又は妊娠に至らない患者様に限りますが

保険での顕微授精と併用することができます。

自費の採卵の患者様へ

採卵にできるその他の工夫

自費の採卵で顕微授精を行う患者様は

ミグリス、タイムラプスと共に無料で行っています。

ミグリス

PICSIと併用できる

精子選別の工夫としてミグリスがあります。

 

詳細は下記の記事を

胚盤胞まで育たない方、ならない方へ ~新しい精子調整法~

採卵日の禁欲期間

ご主人に行っていただきたい大事なこととして

禁欲期間を長くしすぎないがあります。

 

詳細は下記の記事を

体外受精(採卵)前の禁欲期間のベストは?

 

院長 菊池 卓