胚盤胞まで育たない方、ならない方へ ~新しい精子調整法~

卵子の状態が良好で精液検査も正常、初期胚までは進むけれど、その後胚盤胞まで育たないことがあります。

 

精子DNAの損傷が、胚発生の3日目以降に悪い影響を与えることが知られており

胚盤胞到達率の低下の一因になっていると考えられております。

 

 

下記は精子のDNA損傷に関する論文です。

 

DNA損傷が30%未満と30%以上の

2つにグループを分け

受精率、分割速度、良好な分割胚の割合、

胚盤胞に育った割合、良好な胚盤胞の割合

着床率、妊娠率、流産率

について調べています。

 

その結果、

 

分割速度、良好な分割胚の割合、

胚盤胞に育った割合、良好な胚盤胞の割合

着床率、流産率

これらの項目で有意差をもって

損傷率30%未満のグループの方が

良い結果を得られました。

(受精率、妊娠率に統計的な差はなし)

 

特に流産率は

30%以上のグループは42.8%

30%未満のグループは16.8%

と2.5倍の差がありました。

 

精子のDNA損傷に関する一本の論文をご紹介しました。

 

このDNA損傷が増える原因には精索静脈瘤、加齢、に加え

これまで多くの施設で一般的に行われてきた密度勾配遠心法という

パーコール液に精液を重層し遠心分離を行う方法が、

精子に物理的な負荷をかけることになって、DNA損傷を増やすと考えられるようになりました。

 

 

そういったことから、新しい精液処理方法として当院ではご希望の方に“ミグリス”を使用しております。ミグリスは、精液の上に培養液を重層し1時間ほど静置した後、回収ポイントの培養液を採取する方法です。すると、高い運動性をもった精子だけを抽出することができます。

 

原理としては、精液の中から回収ポイントまで移動できるのは、

高い運動性をもった精子だけであることを利用しています。

死んだ精子や運動性をもたない細菌などはそこまで移動できません。

運動性良好な精子だけが、自らの力で泳ぎ、到達できるということになります。

遠心処理を行わないので、遠心力による精子DNAの損傷を防げるというわけです。

 

 

実際に処理方法別の精子DNA損傷率を比較した

英ウィメンズクリニック様の学会発表では

ミグリスの方が遠心法よりもDNA損傷率が低い結果が得られています。

 

 

従来の密度勾配遠心とは

原理が異なる調整方法になりますので、

・胚盤胞になりにくい方

・妊娠されない方に

おすすめしております。

 

ご希望の方は診察時にお訊ねください。

※現時点では顕微授精のみに加えて

ある程度運動精子数がある方のみ使用可能です。

 

培養部より