PGT-Aでモザイク胚(B判定)の胚を移植した場合は?

 

着床前診断(PGT-A)を行うと下記のA~Dのいずれかの結果が出ます。

A 常染色体が正倍数性である胚

B 常染色体の数的あるいは構造的異常を有する細胞と常染色体が正倍数性細胞とのモザイクである胚

C 常染色体の異数性もしくは構造異常を有する胚

D 解析結果の判定が不能な胚

 

前回はPGT-AでのC胚(数的異常)について書きました。

染色体数的異常の胚盤胞は出産に至らない。

 

今回はB判定モザイク胚についてです。

モザイク胚とは

正常な部分と異常な部分が混在している胚です。

 

B判定のモザイク胚ですと

妊娠率や流産率、出生後の予後が気になるかと思います。

 

今回ご紹介する論文は

1000個のモザイク胚の

移植後の転帰を報告しています。

 

 

対象は反復着床不全ないし不育症の方。

5561個の正常胚(A判定)と1000個のモザイク胚(B判定)を移植しました。

 

結果です。

 

 

正常でない部分が50%以上であること

正常で無い染色体の数が多いほど

妊娠継続率ないし生産率は下がりました。

 

正常胚での妊娠継続率ないし生産率は52.3%

3本以上のの染色体に50%以上で正常で無い部分が混じると13.2%まで下がります。

 

筆者らは他に下記も調べています。

・母体の年齢は移植の結果に関係があるか

34歳を区切りに調べられましたが

年齢では結果に変わりはありませんでした。

 

・モザイク胚の赤ちゃんの予後は

出生時の身長と体重は正常胚の赤ちゃんと変わりませんでした。

モザイク胚での出産後の赤ちゃんを

定期的に健診でフォローしましたが

発達障害と肉眼的異常を認めませんでした。

 

※ただ、最後に彼らはモザイク胚の

長期的な予後の懸念は完全には払拭できないため

モザイク胚を移植する場合には患者さんの状況ごとに

慎重に検討する必要があるとしています。

 

私の意見です。

PGT-Aの黎明期では正常胚(A判定)以外の胚は

すべて廃棄するという時もありました。

 

しかし、徐々にモザイク胚での出産報告が

出てくるようになり

モザイク胚だから移植しないというわけでは無く

患者様の背景およびモザイクの程度

で検討する時代になってきていると思います。

 

そんな中1000件ものモザイク胚を移植した

今回の論文は大変貴重ですし

赤ちゃんの予後も大変参考になりました。

 

モザイク胚をどうするかは

本当に悩ましい問題ですが

しっかりとご相談して決めていきたいと考えます

 

院長 菊池 卓