胚移植後の妊娠判定日のhcg基準値とその後の継続率

 

hCG基準値とは 市販の妊娠検査薬はhCGをみています

当院では胚移植後に採血で

血中のhCGを測定して

妊娠判定をしています。

 

妊娠4週0日(胚盤胞移植9日後、BT9)の妊娠判定日の時に血中hCGが100mIU/mLを超えていると、ほぼ胎児心拍が確認できます。

 

hCGは着床後に胎盤になる部分から分泌され

妊娠していなければ分泌されません。

 

市販の妊娠検査薬は

尿中のhCGをみています。

通常のものが50mIU/mL以上

ファストタイプが25mIU/mL以上で陽性反応が出ます。

陽性反応が出ます。

 

尿は濃い、薄いがあり

精度が低くなるため

当院では採血で行っています。

 

現在当院の妊娠判定日は

主に妊娠4週0日頃に行っていますが

その時のhCGの値で

・妊娠が継続するかどうか

・子宮外(異所性)妊娠にならないか

(子宮外妊娠はhCGが低く出やすいです)

をある程度予測することができます

 

*排卵日ないし黄体ホルモン投与日を

2週0日とします。

分娩予定日は

40週0日です。

hCGの増え方、減り方

hCGが増える場合は

48時間毎に倍増

減る場合は

30~36時間毎に半減

します。

 

子宮外妊娠は

hCGの値が低く出ることが多く

その後も微妙な値で

推移することも多いです。

 

また、残念ながら流産になってしまう場合も

低いことが多いです。

ただ、逆に判定日のhCGが低めでも

その後の伸びが良ければ問題ありません。

PGT-A後の判定日の経過でよく見かけます。

 

妊娠判定日ごとのhCG基準値の違い

妊娠判定日をいつにするかは

クリニックごとに違います。

 

あくまで私の印象ですが

*排卵日ないし黄体ホルモン投与日を

2週0日として。

自然周期クリニックは

3週5日

刺激クリニックは

4週0日

にすることが多い印象です。

 

胚盤胞移植は2週5日に行うため

3週5日を判定日にすると

同じ曜日になるため

患者様の都合が良くなることも

多いのですが

微妙な判定で悩むことも多いので

当院では4週0日頃としています。

妊娠判定 3w5d BT7の基準値

下記の論文は

加藤レディースクリニック様の論文です。

3w5d BT7のhCGの値での継続率の差を

年齢別に出しております。

 

 

年齢を

・A 21~34歳

・B 35~39歳

・C 40~44歳

の3群に分けて

hCGごとの妊娠予後を

表しております。

 

①こちらは

赤ちゃんの袋が見える確率です。

⋆臨床妊娠率といいます。

 

基本的にhCGの値が高いほど良いです。

 

3週5日で50mIU/mlを超えると

全年齢で90%以上の確率で

赤ちゃんの袋が見える「臨床妊娠」になります。

 

 

②こちらは

生児を分娩する確率です。

 

 

こちらもhCGの値が高いほど良いです。

 

50~59.9mIU/mlですと

21~34歳で84.8%

35~39歳で75.7%

40~44歳で58.1%の確率で

生児を分娩されています。

 

①、②共に

年齢の影響を受けますが

特に②の生児分娩率は

年齢に強い影響を受けます。

 

どうしても年齢が上がるにつれ

流産率が高くなるため

その分出産する確率は

低くなってしますと考えて下さい。

妊娠判定 4w0d BT9の基準値

次にご紹介する論文は

4w0d BT9のhCGの値での継続率の差を

検討されたものです。

※年齢別では検討しておりません。

 

 

図1は妊娠判定日のhCGの値を

20mIU/mLごとに区切り

子宮内に赤ちゃんの袋が

見える確率を出しております。

 

 

図2は胎児心拍が

見える確率です。

 

基本的にはhCGが100mIU/mLを

超えているとほぼ胎児心拍が確認できるため

『おめでとうございます』

と伝えていますが

100mIU/mL未満でも

無事お子さんを出産されている方は

沢山いますし

1桁でも無事ご出産された方も

経験しております。

 

この論文からは

20程度でも

・赤ちゃんの袋は3割は見え

・胎児心拍も2割は

確認できることがわかります。

 

hCGが低い場合と高すぎる場合の考え方

hcg値が低い場合

胚移植の判定日のhCGの値が

低かったときには

大きく3つの未来があります。

 

①順調に発育

最初が低くても、その後順調に増え

子宮内に赤ちゃんの袋や心拍が

見えれば問題有りません。

 

②流産になってしまう

赤ちゃんの袋が見えずに

生理がきてしまうのを

化学流産といいます。

 

③子宮外妊娠(異所性妊娠)

最も怖いのがこれです。

子宮外妊娠は

破裂すると命に関わることもある

緊急性を要するものです。

 

卵管は子宮と違い細く

伸びることができないため

胎児が発育すると破裂します。

 

 

子宮外妊娠は微妙な値で

推移することも多いため

定期的にhCGの値を測る必要があります。

 

またホルモン補充を

いつまで行うかについては

hCGの値が15mIU/mL以上あれば

継続する可能性があるため

基本的に継続としています。

 

下記記事も参照ください

妊娠判定日のhCGが低いときは再判定を行います。

hcg値が高すぎる場合

 

妊娠判定日のhCGが高いと

「ダウン症や胞状奇胎が心配です」と

ご質問を受けるときがあります。

 

主に下記の3つのことを聞かれます。

①ダウン症

最もよく聞かれます。

おそらくこれは非確定的出生前検査である

コンバインド検査やクアトロテストの項目に

hCGが含まれているからだと思います。

 

ただ、2つの検査共に行うのはもっと後です。

コンバインド検査(妊娠11~13週)

クアトロテスト(妊娠15~18週)

妊娠4週や5週のhCGは関係ありません。

また、妊娠4~5週のhCGの正常の幅は広く

少し高くてもすぐに異常といえるものではありません。

 

さらに、妊娠判定日が2-3日後でも

順調ならhCGの数値は増えますので

判定日が少し後ならそこも考えなければなりません。

 

②胞状奇胎

正常な受精とは、正常な卵子に正常な精子が1つ入ることです。

異常な受精の結果、起きるのが胞状奇胎です。

 

・2つ以上の精子が1つの卵子に入ってしまったり

・精子は1つだけど、卵子の核が無い時に起こります。

 

絨毛がんに進行する可能性があり

まれですが、どんな方にも起こりえますが

体外受精の場合は受精反応が正常かどうかを確認しています。

 

特に当院が使用しているタイムラプスは

より詳細に受精の状態を確認できますので

正常受精であることが明確に確認されている場合は

心配に思わなくても良いのではと考えます。

 

③双子

1つの受精卵しか移植していなくても

双子になることはあります。

双子の場合はhCGの値が高くなります。

 

hCGの値が低くても高くても心配になってしまう

お気持ちはわかるつもりです。

ただ、hCGの値が高いということは

しっかり着床していることの証でもあります。

 

何か気になる点があればその時にお伝えしますので

まずは喜ぶだけでいいのではと思います。

判定日に出血がありますが、採血は必要ですか?

妊娠判定日に採血でhCGを測定する際に

患者様より「出血と腹痛があるので生理だと思う。採血は必要ですか?」

と尋ねられる時があります。

 

この出血は着床出血の可能性があります。

受精卵は子宮内膜にめり込むように着床します。

そのため、内膜は傷つき出血をきたすことがあります。

 

妊娠の判断は採血しなければわかりません。

そのため、出血していても行わせていただきます。

妊娠判定日のおめでとうの意味は

 

妊娠判定日のhCGの値が良いと判断したときは「おめでとうございます」と笑顔で話すようにしています。

しかし、Drによってはあまり感情を出さず

おめでとうという言葉は使わない方もいます。

 

私の研修医時代の話です。

妊娠が判明した方に(妊娠5週程度 中絶希望なし)おめでとうと伝えると上司に怒られました。

「まだ、流産の可能性があるかもしれないだろう。軽々しくおめでとうと言うんじゃない」。

 

では、胎児心拍が確認でき、母子手帳が交付された時(妊娠10週頃)におめでとうと伝えると

「早産になるかもしれないし、IUFD(子宮内胎児死亡)の可能性もあるかもしれないだろう。軽々しくおめでとうと言うんじゃない」。

怒られました。

 

では、分娩が終わり母児共に元気な時におめでとうと伝えると

「これから先天性心疾患がわかるかもしれない。・・・以下同文」。

 

分娩後の1ヶ月健診に伝えたらさすがに怒られませんでした。

しかし、1ヶ月健診は当番制であることが多く

主治医として担当した方の全てに会えるわけではありません。

 

当初は私が嫌われていると思っていましたが

食事にもよく連れてってくれたので

実際にそう思われていたのだと思います。

 

私も正直に言いますと「おめでとう」といわない方が楽です。

特に前回流産であった方に「おめでとう」という時は私もかなり頑張っています。

しかし、以前の記事に書きましたが

悲しみによるストレスがさらなる流産を招いてしまう可能性が示唆されています。

 

いろんな苦労を乗り越え、良い妊娠判定が出ました。

この瞬間はぜひ喜んでほしいですし

その後の流産するかにも関わるのですから、ぜひ笑顔で過ごして欲しいです。

そのために、これからも私は勇気を振り絞って「おめでとう」と言います。

 

院長 菊池 卓