胚移植の前の性行為(性交渉)は成功率を上げるのか
「胚移植周期に性交渉をした方が良いですか」
と患者様に聞かれることが増えてきました。
今回はこのことについて書きます。
メリットとしては
・精液に着床を助ける物質がある可能性
デメリットは
・細菌感染の可能性
・子宮収縮を引き起こし着床を妨げる可能性です。
まず最初に胚移植の後の性行為はしないほうが良いと考えます。
もう着床は終わっているためメリットが無く、
逆にデメリットである細菌感染や子宮収縮の悪い影響を受けやすいからです。
※移植前のみでしたら、もし最悪感染しても移植を翌月以降にすれば移植胚を失うことは無いです。
では胚移植の前に性行為はどうでしょうか
今回それを調べた論文をご紹介させていただきます。
対象は792組のカップル
採卵日に腟に精漿を入れ新鮮胚移植を行った群と生理食塩水を入れた群で比較しています。
※精漿とは精液から精子を抜いたものです。
精液から精液をそのまま入れると回収しきれなかった卵子と精子が受精し、多胎のriskが増えるため精液の中から出来るだけ精子を抜いて、精漿を入れています。
また、できる限り自然の妊娠のメカニズムと似た時にするために、採卵時に挿入しています。
ダブルブラインドの無作為試験です
結果です。
精漿群と生理食塩水群の妊娠反応陽性率、臨床妊娠率、生産率のいずれも有意差を認めませんでした。
私の考えです。
私は元々胚移植前の性行為はデメリットの方が多いのではと考えていました。
理由としては細菌感染が怖いからです。
胚移植は1回がとても重要なものであり
細菌感染で上手くいったかもしれない移植が失敗になることは極力避けたいです。
ただ、それでも妊娠率を上げるかもという報告はあったため、患者様からの申し出があれば許容していましたが、今後はそれ以外の着床率を上げる方法を提示していきたいと思います。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。