胚移植後の安静は必要ですか?
多くの患者様より『胚移植後は安静にした方がいいですか』とご質問を受けます。
立ち上がることにより、胚が落ち来ないかご不安かと思います。
結論から言いますと必要ありません。
むしろ安静にすると良くないという論文もあります。
上記の論文は164周期の体外受精を
・胚移植後30分間ベット上安静
・胚移植後すぐに帰宅
の2群に分けました。
結果ですが
臨床妊娠率および妊娠11週を超えた妊娠継続率は共に50%と46.3%と全く変わりませんでした。
初回の周期に限定するとむしろ安静をすると悪くなっています。
ベット上に安静にするとむしろ悪くなるとする論文は他にもあります。
この論文では卵子提供を受けた240名の方を対象に
・胚移植後10分間ベット上安静 R群
・胚移植後すぐに帰宅(非安静群) NR群
の2群に分けました。
結果ですが
生児出生率は非安静群が56.7%と安静群の41.6%と比較して有意に上昇していました。
逆に流産率は非安静群が18.7%と安静群の27.5%と比較して有意な差はありませんが低下していました。
彼らは論文の中で胚移植の後に胚をおいた場所に見えるポイント(下記の写真の白く光ってるところです)が、胚移植後に安静にしていても、していなくても位置が変わらないことから、重力では胚の位置が変わらないことを示唆しています。
また、ストレスは妊娠に対して悪く働くため、適度に動くことによりストレスが発散できより良い成績につながったのではと推測しています。
当院でも胚移植後は特に安静にせず、すぐに帰宅していただいております。
また、帰宅後から妊娠判定日までも過度に安静にしていただく必要はありません。
いつもされている適度な運動もしていただいて構いません。
判定日まで不安に感じることも多いかと思いますが、どうかいつもと変わらず、穏やかな日々を過ごしていただくことが、ストレスを減らし良い結果に結び着きやすくなると思います。
下記の記事も参照ください。
院長 菊池 卓
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静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。