胚移植当日~妊娠初期に自転車に乗っても大丈夫ですか?
※この記事の内容は妊娠初期(妊娠7~9週程度)までのことです。
妊娠中期~後期については触れておりませんので、ご了承ください。
※アスリートの方が行う負荷が高い自転車での運動も今回は触れません。
『自転車に乗ってもいいですか?』
移植後や妊娠初期の患者様より良くご質問を受けます。
ご不安な点をお聞ききすると
『子宮の近くを使う運動なのでそれが心配』と
いわれる患者様が多い印象です。
『腹筋してもいいですか』もよく聞かれますので
何となく子宮の近くの運動は避けるイメージなのだと思います。
今回ご紹介する論文は
妊娠中の固定自転車の運動についての論文です。
対象は肥満の妊娠10週の単胎女性300人。
・運動群150名
・対照群150名
で比較検討。RCTです。
運動は固定自転車運動を週3回30分以上行い
能力に応じて60分まで運動量は増加させています。
妊娠37週まで行いました。
結果です。
運動群の方が妊娠糖尿病の発生率が有意に低かったです。(22.0% vs 40.6%)
他にも妊娠中の体重増加やインスリン抵抗値なども運動群が良い結果でした。
運動に伴う潜在的な危険因子として考えられる
流産や子宮内胎児死亡の発生率に有意差はありませんでした。
切迫早産の予測因子である子宮頸管長の短縮(25mm未満)は
・運動群で2名
・対象群で5名
その中で対照群の3名のみに早産を認めました。
運動群では認めておりません。
筆者らは固定自転車運動が肥満の妊婦さんの
妊娠糖尿病を安全かつ効果的に予防できると結論づけています。
私の意見です。
日本産科婦人科診療ガイドライン産科編でも
適度な運動は早産や低出生体重児を増加させず
健康増進が期待できるとしており
好ましい運動として固定自転車を上げております。
自転車の子宮近くで運動することに関しては
問題ないと考えて良いと思います。
他に日常で使う自転車の危険性として
『転倒』や『接触』がありますが
お腹が大きくなった妊娠後期では
生じやすく避ける必要があるかもしれません。
しかし、まだお腹が目立たない
妊娠初期の患者様が転倒しやすいとは考えにくく
問題はないと考えます。
※不正出血がある時やつわりがひどいときには自転車に乗らず、安静にしましょう。
胚移植後の安静は必要ですか?でも書きましたが
胚移植後もむしろ安静にしないほうが妊娠率は上がるという報告もあります。
自転車はとても便利なものだと思います。
事故に気を付けて、安全に乗りましょう。
下記の記事も参照ください。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。