卵胞が育ちにくい方への高刺激の効果は?
採卵を希望されるも
なかなか卵胞が発育されない患者様に
たくさん注射をしてはだめですか
とご質問を受けました。
※自費診療の患者様です。
今回ご紹介するのは
早発卵巣不全(早発閉経)の治療で有名な
東京のローズレディースクリニック様の論文です。
※早発卵巣不全とは40歳未満で卵巣機能が低下して、生理が来なくなる状態です
完全に来なくなる早発閉経とまれに卵胞が発育する場合の両方の状態を含みます。
論文の早発卵巣不全の治療の特徴は下記です。
①開始前からエストロゲン(プレマリンなど)の補充を行うこと
高すぎるLHとFSHを下げることが重要なため。
開始前の目標のLHとFSHは共に11mIU/mL未満。
②卵巣刺激は点鼻薬を毎日するショート法
刺激中はLHを5mIU/mL未満、FSH30mIU/mL以上が目標。
早発LHの上昇による予期せぬ排卵を防ぐため
点鼻薬を毎日しながら
ゴナペンなどの注射を225~375単位使用する。
1週間間隔で診察。
卵巣刺激は最長4週間継続する。
4週間で卵胞発育が無ければ黄体ホルモンを投与して生理をおこす。
③初期胚凍結で貯胚してからホルモン補充で移植
AIHやタイミングよりも体外受精の方が出産率が高いため。
また、卵巣が反応する期間は長くは無いため
できる限り胚を貯めておく。
移植可能胚の減少を避けるために初期胚で凍結。
新鮮胚移植は卵巣刺激の日数が長いので不向き。
次周期以降にホルモン補充をしっかり行い、移植にする。
以上になります。
論文の対象は早発卵巣不全の466人、8008周期。
様々な比較をされておりますが
今回は下記の2つを抜粋します。
①体外受精とタイミング・人工授精の検討
②卵巣刺激を連日行うかどうかの検討
ここからは私の意見です。
卵巣刺激をした方が
卵胞発育する割合は高くなると考えますが
ネックになるのが費用だと思います。
※自費の患者様を想定しています。
例としてゴナペン300単位を4週間連日投与した場合の薬剤の費用を計算してみます。
当院はゴナペン900単位を1本36,000円(税込み)でお渡ししております。
1日300単位なので3日で1本使用。
4週間なので10本使用。
このゴナペンのみで36万円になります。
加えて点鼻薬やエストロゲン製剤などの他の薬剤
エコー代金や採卵代金などもかかりますので
金額がすごいことになります。
※以前はもう少し安い注射製剤が多くありましたが
現在は保険適応に伴う需要増加と
原材料不足に伴い供給不足
により安定して処方できる注射は限られてしまいます。
ここまで注射をして
卵胞の発育する割合が1周期あたり15.1%。
なかなか悩ましいと考えます。
ただ、時間は貴重です。
今回の論文でも注射をした方が
卵胞の発育が明らかに良いです。
患者様が費用に関して同意してくださるなら
1つの選択肢にはなると思います。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。