反復着床不全の方、卵巣予備能低下のへ 子宮内、卵巣内PRP(PFC-FD)注入
目次
PRP(PFC-FD)とは
血管が切れると出血しますが
血液の中には血小板という出血を止める働きのある細胞があります。
血小板は血を止める際に
多量の成長因子を出すことで
細胞を成長させ、修復も行います。
この成長因子に注目したのがPRP療法です。
患者様から血液を採取。
採取した血液から血小板の濃縮液を作成し、患部に注入します。
自然治癒力をサポートしていきます。
整形外科では良く行われており
メジャーリーグの大谷選手も肘の治療で行っています。
不妊治療領域でも行われるようになり
子宮ないし卵巣に注入します。
子宮注入の効果ですが、胚移植前に2回子宮に注入します。
・子宮内膜を厚くする
・子宮内膜を活性化させて着床率を上げる
2つの効果があります。
卵巣注入の効果ですが、主に採卵時に1回卵巣に注入します。
・卵巣予備能の改善
・獲得卵子数や胚の増加
が報告されるようになりました。
PRP療法をより発展させたのが
PFC-FDです
PFC-FDはPRPを作成した後に
成長因子のみをさらに抽出し
凍結乾燥したものです。
成長因子のみを抽出しているため
PRPと比較してより多くの成長因子を含まれています。
また凍結乾燥しているため
有効使用期限が常温で約6か月と長いです。
スケジュール
PFC-FD作成
約50mLの採血をします。(※生理時期や食事に関件なく、いつでも大丈夫です。)
約3週間後に2本のPFC-FDが手に入ります。
有効期限は半年です。
平日午前中の採血となります。
子宮注入
1周期で2回行うことを推奨します。
1回目は月経開始から10日目前後、2回目は月経開始から12日目前後に行います。
卵巣注入
卵巣注入は効果が出るまでに2~3ヶ月はかかりますので
採卵時に行うことを推奨します。
イメージとしましては卵胞発育が全く無い方が取れるでは無く
1~2個の方が3~4個になるです。
採卵時に次回以降の採卵数上昇を目的に行います。
早発閉経の方には当院では行えません。
子宮内注入の論文報告
反復着床不全(良好胚を少なくとも3回以上移植するも妊娠しない)の方に
PRPを行うと妊娠されたという論文は多くあります。
近年報告されたものをいくつかご紹介します。
①
対象はグレード良好胚を3回以上移植するも妊娠されない97名。
ホルモン補充で凍結融解胚移植をおこなっています。
RCT(無作為化比較試験)です。
・胚移植前にPRP注入 VS
・PRPなしでホルモン補充のみ
で比較検討しています。
結果です。
着床率、妊娠率共にPRPを注入する方が有意に高かったです。
②
対象はグレード良好胚を3回以上移植するも妊娠されない98名。
ホルモン補充で凍結融解胚移植をおこなっています。
RCT(無作為化比較試験)です。
・胚移植前にPRP注入 VS
・PRPなしでホルモン補充のみ
で比較検討しています。
結果です。
今回の論文では解析方法を2つ用いていますが
子宮内膜厚、臨床妊娠率、妊娠継続率いずれも両方の解析でPRP介入群で高かったです。
卵巣内注入の論文報告
①
対象は高齢(38歳以上)かつ卵巣予備能が低下した83名。
その中の46人に毎月1回のPRPの卵巣注入を3周期行い
効果を比較検討しました。
後方視研究です。
結果です。
②
後方視研究です。
対象は30~45歳の卵巣予備能低下と診断された510名。
PRPの卵巣注入は月経終了後10日以内に行っています。
PRP注入直後に卵巣予備能評価の為の採血とエコーを行い、
翌周期の生理2日目に再度採血とエコーを行い、改善があれば採卵の為の卵巣刺激を開始しております。
PRP注入後22人が自然妊娠し、14日が追跡不能となったため
474人が採卵を試みました。
結果です。
312人(65.8%)が胚を作成し、移植を受けることが出来ました。
83人(17.5%)が妊娠し、54人(11.4%)が妊娠継続しました。
また、PRP注入により卵巣予備能の改善もしております。
対象にならない患者様
・感染症検査が陽性の方
・血小板が低下してる方、機能異常の方
・採血が50mL採取できない方
※採血前は脱水にならないよう十分にお食事や水分を取ってからご来院ください。
・卵巣内注入の場合、卵巣がエコーで明確に描出出来ないないし腸管と癒着しているなど穿刺困難と判断される方
※当院で治療中の患者様のみに行わせていただきます。
PFC-FDは自費診療
PFC-FDは現時点では保険適応は無く、自費です。
先進医療でもまだありません。
保険と自費を同時に行う混合診療は禁止されておりますので
採卵から全て自費になります。
ただ保険診療では行えないことも可能になります。
詳細を下記の記事にまとめております。
まとめ
PRP(PFC-FD)療法は以前より気にしておりましたが
RCT(無作為化比較試験)などでこれほど良い効果を出しているのでしたら
当院でも取り入れていきます。
作用機序についても
ご自分の血液を使いますので、アレルギー反応の心配は無いですし
元々備わっている自然治癒の仕組みを応用するのも
とても良いと考えます。
整形外科や歯科でも広まっておりますし
産婦人科でも最初に始まった着床不全から
卵巣の機能の改善にまで広がってきています。
自費診療になりますし、費用などご心配なことも多いかと思います。
いつでも院長にご質問ください。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。