不妊治療での先進医療のご説明 ~タイムラプス・SEET法・2段階胚移植、子宮内細菌叢検査、PICSI~

 

体外受精(不妊治療)の先進医療とは

体外受精での先進医療とは一言でいいますと

保険に併用できる自費のオプションです。

 

保険と自費の診察を同時に行うことは

「混合診療」として、禁止されていますが

先進医療として厚生労働省に認可された診療のみ

自費診療が保険診療と併用できます。

 

どのクリニックでもできるの?

先進医療はどのクリニックでも行えるものでは無く

産婦人科専門医であり、かつ生殖医療専門医であること

十分な治療経験を積んでいること

などが認可されるためには必要になります。

 

受けるための条件

胚移植を何回か行っても妊娠が継続しないなどの

条件がある先進医療もあります。

条件については各先進医療の冒頭に記載しております。

 

先進医療の検査や治療の種類

現時点で当院で行える先進医療は

・タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養

・子宮内膜刺激術(SEET法)

・2段階胚移植術

・子宮内細菌叢検査

・ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)です。

現在申請中のものは申請が通り次第、ご紹介していきます。

 

・タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養

※初回採卵から行えます。

 

 

胚(受精卵)にとって私たちが生活している環境は

胚にとっては良い環境ではありません。

※胚は主に卵管で育つため、酸素や光が苦手です。

 

そのため、卵管と同じ環境を培養器の中で再現。

暗い培養器の中で、患者様達の胚を育てます。

ただ、成長の様子は定期的に観察しなければなりません。

従来は培養士が培養器の外から取り出し

1日数回光や外気の中で観察していました。

 

しかし、これでは観察を行うたびに

・胚は外の光や酸素の悪い影響を受ける

・培養器も開け閉めをすることで、環境が一時的に悪くなる

(冷蔵庫を頻回に開け閉めするイメージです)

などの悪い影響が出てしまいます。

 

それを解消するのがタイムラプス撮影法です。

培養器内で15分に1回胚を撮影し、動画にします。

その動画を見ることで

・培養器を開け閉めすることもなく

・胚に直接さわることもなく

胚の発育状況を誰でも、何回でも観察できます。

 

培養士たちがより詳細な観察ができるようになり

さらに患者様にも発育の様子を見ていただけるようにもなりました。

当院では採卵後の胚の説明を動画をお見せしながら行っております。

 

胚のグレードが良かったとの報告もあります。

詳細は下記のブログを参照ください。

胚が良い環境を維持するために ~タイムラプスインキュベーター~

 

・子宮内膜刺激術(SEET法)

※初回胚移植から行えます。

・2段階胚移植術

※反復して着床又は妊娠に至らないかつ上記子宮内膜刺激術をしている。

共に胚盤胞移植の妊娠率を上昇させるのが目的です。

基本原理は同じですので、一緒に説明します。

 

妊娠判定日のhCGが低い時は再判定を行います。

 

胚は卵管の中で発育しながら、5~6日間かけて子宮に向けて移動し、胚盤胞の状態で子宮に着床します。

胚は卵管の中子宮に向けて信号を送っており

子宮内膜はこの信号を受け取り、着床に向けて受け入れの準備を始めるとされています。

 

 

胚盤胞移植では培養器の中で分割胚(初期胚)→胚盤胞に発育させます。

胚から子宮内膜への信号が無いまま

いきなり胚盤胞の状態で子宮にくるため

胚と子宮内膜の相互応答ができない可能性があります。

 

それを防ぐために

胚盤胞移植の2-3日前に

・信号の入った培養液を子宮内に注入するのがSEET法

・分割胚(初期胚)を胚移植するのが2段階胚移植法です。

 

効果は胚がある分、2段階の方が強力なのですが

半面双子になるriskも高いため

2段階胚移植を行うためには

反復して着床又は妊娠に至らないかつ

子宮内膜刺激術(SEET法)を実施済

であることが条件となります。

 

また、共に注入ないし胚移植のために来院回数が1回増えます。

(※拘束時間の目安 火以外 14:50~16:30 火 12:30~14:00)

 

SEET法及び2段階胚移植の成績向上の詳細は

下記のブログを参照ください。

SEET法とは?痛みや出血はあるのか?

 

・子宮内細菌叢検査

※反復して着床又は妊娠に至らない患者様が対象です。

妊娠率低下の原因となる慢性子宮内膜炎は

善玉菌(デーデルライン桿菌)が減り

いわゆる雑菌が子宮内膜に

炎症を引き起こすことにより

生じると言われております。

 

下記が田んぼに例えたイメージです。

 

善玉菌が多いと妊娠率が上昇します。

 

このときに大事なことは

しっかりと検査をすることです。

 

 

検査をして適切な治療を行い

善玉菌がいる環境を作ります。

 

子宮内腔の細菌量は少なく従来の方法では検出できませんでした。

近年遺伝子解析が発達し、網羅的に解析ができるようになり

子宮内の細菌分布がわかるようになりました。

 

それが先進医療で実施可能な子宮内細菌叢検査です。

この子宮内細菌叢検査を行うことにより

細菌の種類に応じた

必要最小限の投与量・種類で

適切な治療を行っていくことができます。

 

またよくご質問のある痛みについてですが

子宮内フローラ検査の痛みはほぼありません。

 

人工授精や胚移植で用いるカテーテルで

子宮の表面を洗って細菌を回収します。

胚移植が痛くない方は痛くないと思います。

 

ご希望の方は院長にお伝えください。

下記の記事も参照ください。

慢性子宮内膜炎、子宮内細菌叢(フローラ)の検査・治療 ~抗生剤は適切な種類・量で

 

・ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)

※反復して着床又は妊娠に至らない患者様が対象です。

 

 

ICSI(顕微授精)をする際には

精子の運動性や形から注入する精子を選びます。

※形が良くて元気な精子が良い精子です。

 

しかし、目で見る選別方法では精子の

成熟度やDNA損傷の程度はわかりません。

 

未熟な精子が注入される結果として

胚の発生率の低下や流産率の増加するという報告もあります。

 

成熟度の高い精子ほどDNA損傷が低く

ヒアルロン酸に結合する特性を持つため

この特徴を利用して従来の培養士の目での選別に加えて

更なる精子選別を行うのが

PICSI(ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)です。

 

患者様に特に追加の処置はありません。

子宮内膜などに自然に存在している粘稠性物質です。

胚移植をする際のオプションとして保険適応にもなっております。

下記の記事も参照ください。

高濃度ヒアルロン酸含有胚移植用培養液は妊娠率と出産率を上昇させます。

気になる点がありましたら、診察時にいつでもご質問ください。

患者様に早く妊娠していただけるよう、今後も先進医療を取り入れていきます。

 

費用面での注意点

最後になりますが、先進医療は自費であり

高額療養費制度の対象にはならない点を

ご了承のほどお願いいたします。

 

院長 菊池 卓