2個胚移植の妊娠率は?双子(多胎)の確率は?
胚移植を繰り返しても妊娠されない患者様に
2個胚移植をご提案する時があります。
その際によく尋ねられるのが
『どれくらい妊娠率が上がるのか?』
『双子になる確率は?』
の2つですが、さらに時々聞かれるのが
『良好でない胚が悪さをしませんか?』です。
良好胚が2つ揃わない患者様も多く
また双子を避ける目的であえて
良好胚+良好でない胚で2個胚移植を
行うこともあります。
今回ご紹介する論文は
良好でない胚を加えて2個胚移植を行うと
・出産(妊娠)率は上昇する(悪影響はない)
・しかし、多胎妊娠も上昇する
ことを報告しています。
4640周期の新鮮胚盤胞移植が対象の後方視研究です。
胚盤胞の評価としてはガードナー分類の
・AAまたはABをgood
・BA、BBまたはBCをfair
・CCまたはCBをpoor
と評価しています。
・Good胚の単一胚盤胞移植(3751周期)と
・Good胚+それ以外(fair,poor,胚盤胞にまで至っていない桑実胚なども含む)の2個胚移植889周期
で生産率及び多胎率を比較検討。
下記のグラフが結果ですが、今回の検討は前提として2個戻しの群の方が平均年齢が2.5歳高く、採卵数も少ないという不利な条件です。
生産率は1個戻し(良好胚)が44%に対して2個胚戻し(良好胚1個+それ以外)が50%と高い傾向にありました。
しかし、多胎率も合わせて上昇し2個胚戻しが有意に高いです。(1% vs 16%)
下記は加えた胚の発育段階別の成績です。
桑実胚→初期胚盤胞→poor→fairの順で発育が良好=良い胚です。
発育段階がよくなるにつれ、生産率及び多胎率は上昇しています。
poorないしfairの胚盤胞を加えた場合は生産率61%でしたが、多胎率も27%に増加していました。
下記は年齢別の比較です。
38歳でを区切り、38歳未満とそれ以上で比較。
38歳未満では2個戻すと出産率が7%増加するものの(51% vs 58%)、多胎率は18%増加していました。(1% vs 19%)
38歳以上では2個戻すと出産率が12%増加するものの(33% vs 45%)、多胎率は15%増加していました。(1% vs 19%)
筆者らは生産率と多胎率が上昇していることから
良好でない胚を追加で移植することによる着床への負の影響はほとんどないであろうと結論付けています。
しかし、妊娠率の上昇幅が少なく、多胎率の上昇幅が大きい38歳未満の方には単一胚移植を推奨する必要があると結論付けています。
ここからは私の意見になりますが
多胎妊娠は母児共に負担が大きいため
できるだけ避けるべきと考えております。
しかし、着床不全の検査が問題なく
良好胚の1個戻しを何回しても妊娠されない患者様が
2個胚移植で妊娠されていく姿を見ると
双子(多胎)になる危険はあるものの必要なことなのだと思います。
全ての患者様に行うものではありませんが
今後も治療の選択肢の1つとしてご提示していきます。
下記の記事もご参照ください。
体外受精の胚移植は何個まで可能ですか?~2個まで?3個まで?~
排卵誘発剤を飲んだら卵胞が3つ育ちました。キャンセルですか?
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。