男性の不妊症への抗酸化サプリの可能性
「男の妊活にはどんなサプリがいいですか」と
患者様より尋ねられます。
その時に推奨するのがコエンザイムQ10、ビタミンC/Eなどの抗酸化作用を持つサプリメントです。
酸化とは?
我々人間は酸素を取り込んでエネルギーを作る酸化を行っています。
生きていくうえで必要ですが
結果生じる活性酸素は過剰な酸化を引き起こし
我々の体を傷つけます。
※リンゴを切ってしばらくすると色が変わったり、油も黒っぽくなるのも同じ理屈です。
男性で活性酸素が増えすぎると
精子の運動率の低下や精子のDNA損傷が引き起こし
妊娠率の低下や流産を引き起こす可能性があります。
活性酸素による過剰な酸化は不健康な生活で
増える可能性が指摘されており
抗酸化サプリによる効果が期待されていました。
論文での報告
精液所見を改善させるために
抗酸化サプリの投与を行った報告は国内外に多数あります。抜粋し、ご説明します。
精液所見を改善した報告
対象は乏精子症と診断された169人。
抗酸化サプリ(コエンザイムQ10及びビタミンC/E含有)を定期的に内服してもらい
精液所見の経時的変化を評価しています。
精子濃度は使用開始後1-6ヶ月の間、運動率は1-9ヶ月の間有意に上昇しました。
さらに筆者らは特記すべきこととして
・副作用や検査値異常を認めなかったこと
・48組(28.4%)が妊娠したこと
(内自然妊娠16組、生殖補助医療32組)
を報告しています。
酸化ストレスが高い方ほど有用の報告
対象は精液異常を指摘された67人。
・抗酸化剤群(コエンザイムQ10及びビタミンC/Eのサプリ)
vs
・メチコバラミン(ビタミンB12)の単独投与で
精液所見の経時的変化を比較しております。
さらに彼らは精液所見中の酸化ストレスに注目し
ORP検査(精液中酸化還元電位測定)を行い
高ORP(酸化ストレスの高い)群と低ORP(酸化ストレスの低い)群に分けています。
※酸化ストレスとは活性酸素が過剰な酸化を引き起こしている状態を指します。
低ORP(酸化ストレスの低い)群では
抗酸化剤群およびメチコバラミンで精液所見に有意な変化はありませんでした。
高ORP(酸化ストレスの高い)群では
抗酸化剤群およびメチコバラミン共に精液濃度及び総運動精子数を有意に上昇させました。
副作用の報告も認めませんでした。
90本の論文をまとめた報告
2022年のコクランレビューで、90論文 10.313人の18-65歳の不妊男性に対する抗酸化サプリの効果が分析されています。
エビデンスレベルの低い結果としていますが
妊娠率および生児出産率に有効性を認める報告が多数報告されています。
・妊娠率:プラセボor無治療 15%と仮定すると抗酸化剤で20~30%に改善。
・生児出産率:プラセボor無治療 16%と仮定すると抗酸化剤17~27%に改善。
副作用としては胃腸の不快感が2~7%の方に報告されています。
SOサポートは抗酸化サプリ
写真のSOⅡサポートは
抗酸化作用を持つコエンザイムQ10、ビタミンC/Eを共に含んでいる抗酸化サプリです。
まとめ
私の意見です。
ファーストフードのブログでも触れましたが
不健康な生活は活性酸素を増やし
健康だけで無く、妊娠にも良くないようです。
※特に男性は生活習慣の悪化が精液所見を悪くします。
・肉体的、精神的ストレス
・タバコ
・酸化した古い油を使用した食べ物
などを避けることが良いですが、急に変えるのも難しいです。
過剰な酸化を防ぐために
生活習慣の見直しを行いながら
抗酸化サプリを摂取するのも良いかと思います。
サプリの摂取はすぐにでも行えますし
適量を飲む分には
稀に起きる胃の不快感以外には大きな副作用がありません。
精液所見が悪めの患者様は
・2-3日おきの射精
・精巣をあたためない
と共にぜひ検討して下さい。
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院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。