PPOS法採卵におけるルトラールとデュファストンの使い分け
前回はHRT周期でのルトラールとデュファストンの違いについて説明しました。
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当院では卵巣予備能が良好な患者様の卵巣刺激方法を
・アンタゴニスト法
・PPOS法
のどちらで行うことが多いです。
PPOS法は上記の図のように黄体ホルモンで早期排卵を防ぎながら
卵巣刺激を行う方法です。
患者様の特性に応じて
ルトラールとデュファストンの使い分けをしております。
※当院では主にデュファストン4錠(20mg)を用います。
下記の論文は黄体ホルモンの特性と強さについての報告です。
デュファストン(1錠5mg)やルトラール(1錠2mg)は
タイミングや人工授精の黄体ホルモン補充で使用する際には
共に1日3~6錠使用することが多いです。
基本的にルトラールは強く、デュファストンは弱いです。
上記の論文でもデュファストンは30mg(6錠)以上必要
ルトラールはたった1錠で排卵抑制するとされています。
実際に私の使用している実感でも
ルトラールは本当に強力に排卵抑制を行います。
LHが1未満になる患者様も多く、早期排卵になった患者様を見たことがありません。
しかし、その代償として卵胞発育にブレーキがかかってしまい
なかなか卵胞が育たなくなってしまう患者様もおります。
卵巣刺激においてこれはアンタゴニスト法でも同じですが
・アクセルの働き 卵胞を育てる注射(FSHを上昇)
・ブレーキの働き 早期排卵を抑える(LHの抑制)
のバランスを取らないといけないのですが
ルトラールはそのブレーキの効果が強すぎる印象です。
それに対してデュファストンはマイルドです。
卵胞発育を適度に抑えながら、卵胞発育の邪魔をしません。
なので当院ではデュファストンを主に使用しております。
近年の論文(下記)では20mgでも排卵抑制をするという論文も多く有り
私も現在まで早期排卵した患者様がいないため20mg(4錠)/日でおこなっております
ではどのような患者様にルトラールを使用するかですが
・排卵した既往がありご不安の強い方
・PCOSでLHがかなり高い方
※LHが高すぎても卵胞発育には良くないため、LHを早期から下げる目的です。
上記の患者様に使用しております。
PPOS法採卵は新しい卵巣刺激であり今後も新しい知見が出てくるかと思います。
より良い方法を今後も模索していきます。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。