メラトニンは採卵(不妊治療)の成熟卵子数を増やします。摂取量は?
最初の採卵で良い結果で無かった患者様に
当院ではメラトニンのサプリを勧めております。
メラトニンは脳から分泌されるホルモンで、主に睡眠・覚醒のリズムを司っています。
時差ぼけの予防や治療に使われることもあります。詳細はこちらを
他の作用として強力な抗酸化作用があり
卵胞内で酸化ストレスから卵子を守ります。
酸化ストレスは卵子の成熟度や胚の質を低下させることが報告されており
それを防止し、不妊治療の成績を改善させる対策の1つにメラトニンのサプリがあります。
今回ご紹介する論文はメラトニンを使用することで
採卵時の成熟卵子数が増加したことを報告しております。
7件の研究(RCT)を評論しています。
総患者総数は889人。
メラトニン投与量は3mg×1~8mg×2/日と様々で
内服開始日も様々でしたが、周期の開始からの報告が多いです。
結果です。
メラトニン投与群が有意に成熟卵子数の獲得数が多かったです。
(Mean Diff.⁼1,82; 95% CI 0.37–3.27;p⁼0.01).
また臨床妊娠率もメラトニン群が有意差はないものの高い傾向にありました。
(OR⁼1.35; 95% CI 0.97-1.87; p⁼0.07
いずれの研究も患者数が少ないものの、メラトニンの体外受精における有用性を示しております。
この7件の研究の中にメラトニンの増量について調べた論文がありましたので
併せて報告させていただきます。
患者様からも『メラトニンを増量しては駄目ですか?』
と時折ご質問を受けますので。
当院は3mgを1日1錠寝る前に1回内服です。
対象は初回の採卵を行う150人。RCTです。
・プラセボ(偽薬) 36人
・メラトニン2mg×2/日 38人
・メラトニン4mg×2/日 36人
・メラトニン8mg×2/日 40人
上記4群に分けられました。
採卵周期2日目から採卵前日の夜まで内服。
獲得卵子数、培養結果、妊娠率を比較しております。
結果です。
メラトニンの投与量が増加するほど
卵胞液中のメラトニン濃度は増加していました。
※プラセボと比較して8mgは約9倍。
しかし、採卵の結果や培養成績、妊娠率などは
いずれの群も有意差はありませんでした。
※メラトニンを飲む量を増やしても成績は変わらない。
筆者らは今回の研究で差がつかなかった理由として
初回採卵の患者さんであった可能性を示唆しております。
元々、メラトニンなどの補助療法の結果が最大限に発揮されるのは
『反応の悪い』患者さんであるため。
上記の論文の2つの論文を読んでの私の意見です。
メラトニンは日々の臨床からも有用であると感じておりますが
それでも採卵初回の患者様に投与を勧めるのはやりすぎなのだと感じました。
また至適投与量についても
メラトニンは眠気を誘発する可能性があるため
日中の内服はriskがあると考えていましたので
現状の3mgを1回寝る前に内服で良いのだと思いました。
副作用もほとんど無いと報告されておりますので
初回の採卵がうまくいかなかった患者様に
お勧めいたします。
下記の記事もご参照ください。
DHEA、メラトニンの注意点 ~胚移植の前には念のため中止にしましょう~
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。