採卵(体外受精)の痛みを減らすための工夫 ~2段針と静脈麻酔の使用~
『採卵は痛いですか?』とご質問を受けます。
痛いのが嫌ですし、ご不安だと思います。
当院の対策です。
・採卵針を細くする
・痛み止め及び麻酔をしっかりする
まずは採卵針についてです。
ただ、細ければ細いほど良いわけではありません。
細いことのメリット
・痛みを減らせる
・出血を減らせる
対してデメリット
・卵胞液を吸引する時間が長くなります。
特にたくさん卵胞が発育した方ですと、かなり時間は長くなります。
針が刺さっている時間が長いのも、苦痛です。
細い針ですと下記の様にぽと、ぽとです。
太い針ですと滝のように吸引できます。
時間は全然違います。
・卵子が変性してしまう可能性があります。
(特に吸引圧が高い場合)
この相反することの解決策として先は細く、途中から太くなる2段針が考案されました。
上の画像が2段針、下が通常の針です。
針の先端しか患者様には刺さりませんので、その先端のみ細くし、残りの部分を太くしています。
成績を比較した論文が下記になります。
・2段針(RN群) 先端20G途中から17G
・通常針(SN群) 全て17G
針の太さにつきましては下記の画像を参照下さい。
参考までに当院の採血の針は22Gです。
257名を前方視的無作為に分けています。
・2段針(RN群) 129名
・通常針(SN群) 128名
全例局所(部分)麻酔でおこなっております。
評価項目は
・痛み(VASで評価)
VASについてはこちらを参照下さい。
・出血及び胚の発育に関わる因子です。
まず痛みについてです。
(VASは数字が大きいほど痛いです)
2段針群 21mm 通常針群 26mmと2段針の方が有意に痛くなかったです。
出血は医師が思うより出血が少なかったかで評価しています。
2段針群 40% 通常針群 24%と2段針群の方が有意に出血が少なかったです。
(赤のラインを引いてあるところです)
胚に関わる因子は変わらず、卵子が変性する確率も変わりませんでした。
まとめますと2段針は通常の針と比較して
痛みと出血が少ないけれど、胚発育の成績は変わりませんでした。
そのため当院では全ての患者様に2段針を使用しております。
ただ、そんな2段針にも大きな欠点があります。
高いです。通常の針の2-3倍はします。
しかし、患者様の痛みには変えれませんので、保険適応になってもこのまま使用していくつもりです。
同様の報告はこちらの論文でもされております。
採卵時の麻酔については下記の記事をご参照ください。
院長 菊池 卓
—–静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。