採卵の空胞や未熟卵はなぜ起きるの?採卵のトリガーとは?

採卵で空胞(取れない)や未熟卵が多い原因は?

トリガーの使い方が良くなく、成熟が足りなかったことも原因の1つになります。

 

 

写真にある黒い卵胞(大きさ20mm程度)の中に卵子(大きさ0.13mm程度)が入っています。

下記のイラストのイメージです。

 

 

採卵は卵胞に針を刺して内用液ごとすべてを吸引して卵子を回収する手技です。

 

ただ、1つの卵胞を刺したら毎回1つ卵子が回収できるわけではありません。

卵子が取れない、回収できない場合もあります。

その原因としては様々なものがありますが

成熟が足りなかったことも原因の1つになります。

 

卵子は成熟すると顆粒膜細胞からはがれ、卵胞内に浮遊します。

そうしますと、下記のイメージのように卵子が回収できます。

 

 

成熟が足りないと卵子が剥がれないため

下記のように卵子が回収来ません。

 

 

また、卵子には成熟卵子と未成熟卵子があり

成熟卵子の方がその後の発育もよい場合が多いです。

 

採卵で質の良い成熟卵子を増やすには?

①多くの卵胞を十分な大きさにすること

②しっかりと成熟することが必要になります。

①については下記のブログを参照ください。

採卵の刺激法~卵胞の大きさは不揃い(バラバラ)でも問題ありません~

 

②の卵子を成熟させることについてです。

何もしなくても卵胞が大きくなると

『LHサージ』というきっかけが起き

卵子成熟→排卵が起きます。

 

ただ、採卵は我々と患者様ご夫妻の都合の良い時にしなければなりません。

夜3:00に採卵と言われても困ってしまいます。

 

 

そのためトリガーと呼ばれる点鼻薬(GnRHアゴニスト)やhCGを使って、計画的に卵子を成熟させ、採卵の計画を立てます。

点鼻薬とhCGの違いですが、まずは点鼻薬から

 

 

良い点:点鼻薬なので痛くない。

効果時間が短いので、副作用であるOHSSが起きにくい。

OHSSについてはこちら

 

悪い点:点鼻薬のため吸収が悪い時があり

効果時間も短いのでうまく成熟しない時がある。

※他院で空砲のみだった患者様の治療を聞くと

排卵してしまうのとOHSSを恐れて

小さめの卵胞で点鼻薬のみのことが多い印象です。

 

 

次にhCGについてです。

hCGは千~1万単位まで多くの製剤がありますが

この写真は当院で最も多く使用している

オビドレルという製剤です。6600単位相当です。

 

良い点:強力な作用と長い作用時間があり

卵子を成熟させる力が強いです。

注射のためしっかりと吸収されます。

 

悪い点:注射をしないといけない。

OHSSになりやすい。

OHSSで入院になるのは、ほぼhCGを使用した時です。

 

採卵数とOHSSのバランスを取りながら

トリガーを決めるのが腕の見せ所でもあります。

空胞や未熟卵子の対策と改善方法

通常トリガーは点鼻薬かhCGのどちらかですが

ダブルトリガー、さらにhCGを追加するトリプルトリガーを行うこともあります。

※ダブル、トリプル共に自費での患者様です。

ダブルトリガーとは

その名の通り点鼻薬とhCGを併用することです。

トリガーには下記の2種類があります。

・点鼻薬(GnRHアゴニスト)

 

 

・hCG

 

 

それぞれ良さがあるのですが

点鼻薬は患者様ご自身のホルモン(LHサージ、FSHサージ)で

卵子を成熟させます。

 

 

対してhCGはLHと同様の作用を持ちますが

効果の持続時間が長く強力です。

 

点鼻薬にはLHサージに加えてFSHサージも起こす、hCGは持続時間が長いとそれぞれ違った長所があります。

点鼻と注射と投与経路も違います。

 

正常な反応をされる患者様にはダブトリガーはそれほど効果がないとする報告もありますが、

 

 

上記の報告のように過去の採卵において成熟卵子が少なかった患者様に対して

ダブルトリガーが有効であったとする報告もあります。

 

費用面と手間が増える以外には

患者様に大きなデメリットが発生しないと考えられるため

当院では自費の方は初回よりダブルトリガーで行っております。

※OHSS riskの高いないしショート法の患者様以外で

 

トリプルトリガーとは

ダブルトリガー(点鼻薬+hCG(オビドレル)に加えて、さらにオビドレルを加えたものです。

ダブルトリガーを行っても

空胞、未熟卵になってしまう患者様もおられます。

その場合はトリプルトリガーを推奨します。

 

この論文はhCGのダブルトリガーについての論文です。

 

 

AMHが0.2ng/mL及びAFCが3未満と卵巣予備能が低く

採卵の36.5時間前にhCGで1回トリガーするも卵子を獲得できなかった

35~42歳の85人の女性が対象。

※85人のうち41人は他の診療所に成功の見込みが低いとして治療を拒否されていた。

 

採卵の36.5時間前に加えて24時間前にも合わせて2回のhCGのトリガーを行いました。

採卵後3日目に1~2個の新鮮胚を移植。

hCGはすべてオビドレルを使用。

採卵はすべて同じベテランの産婦人科医がおこなっております。

 

 

結果です。

8人が採卵自体をキャンセル。

66人が卵子回収でき(77.6% 66/77)

57人が少なくとも1回の胚移植ができております。

 

筆者らはオビドレルが体内で代謝されて、効果を失うのが早いかたがいる可能性に注目しており

そのため注射の量を2倍にするのではなく、回数を2回にしたとコメントしています。

 

私の意見です。

卵巣予備能が低く、厳しい方達に対して

とても良い結果であると感じました。

 

ダブルトリガーをしても成熟卵子を回収できない患者様はおられ

改善策に悩んでおりましたが

この論文を読んでから

当院の採卵で成熟卵子が回収できなかった患者様には

従来の点鼻薬+hCG(オビドレル)に加えて

さらにオビドレルを加えたトリプルトリガーで行っております。

 

トリプルトリガーにすればすべての患者様が

成熟卵子を回収できるわけではありませんが

回収率は上がつている印象があります。

 

卵子が回収できないは非常に悲しいです。

今後もできることは何でも行いますので

ご希望の際にはお伝えください。

※OHSS riskの高い患者様には行えません。

 

院長 菊池 卓