より良い黄体ホルモン薬の使い方~胚移植において~
凍結融解胚移植のホルモン補充周期における黄体ホルモン薬の使い方についてです。
下記のイラストの赤線の部分です。
黄体ホルモンの投薬の仕方は3種類あります。
・経口(デュファストンやルトラールなど)
・経腟(ルティナスやルテウムなど)
・注射(プロゲデポーなど)
天然型の経腟製剤が発売されてからは
腟剤が単独で使用されることが多かったのですが
経口や注射の良さもあり
近年は多剤を併用されることも増えてきました。
今回ご紹介する論文は
腟錠と経口薬を併用する方が良いという論文です。
ホルモン補充で凍結胚移植をされた1364人が対象
・腟剤+経口 732人
・腟剤のみ 632人
で比較検討しております。
腟剤+経口群が有意に流産率が低く(3.4% vs 6.6%)、生産率も高い傾向(46.3% vs 41.3%)にありました。
筆者らは理由として
腟剤をうまく吸収できない方がおり
そうした方に対して経口剤の併用が有効だったのではと述べています。
腟剤の良さは注射(黄体ホルモンは筋肉注射)と比較すると
・痛みがない
・通院の手間がない(筋肉注射の自己注射は勧めないです)
内服と比較すると
・肝臓の代謝を受けず、子宮内膜にすぐに作用する
※内服薬は吸収されるまでにかなりその量が減ります
・内服薬のような気持ち悪さなどが出にくい
などの良い点が多くあるため、ホルモン補充周期の中で最も使用されております。
ただ、腟剤を吸収されにくい方はいるため
経口や注射を併用していくのは良い方法だと思います。
当院は自費の患者様は基本は経口+腟剤で
黄体ホルモンの低い方にはさらに注射も併用しております。
薬が増えると大変であることは重々承知ではあるのですが
最短で妊娠していただくためにご理解のほどお願いいたします。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。