着床障害を改善するために (G-CSF、GM-CSFについて) ~日本の報告~
胚移植をしてもなかなか妊娠しないことを着床不全といいます。
着床不全には様々な原因がありますが
子宮内膜が厚くならないことや子宮内環境の悪化
などもその原因の1つと考えられます。
子宮内膜が厚くならない原因としては
・流産手術や子宮内膜掻爬術などの子宮内手術
・加齢に伴う卵巣機能の低下
などがあります。
当院では子宮内膜を厚くさせ、着床環境を改善させるために、様々な方法
エストロゲン補充の強化、低容量アスピリン、葉酸、ビタミンE(ユベラ)の投与など
を行っているのですが、、近年G-CSFの子宮内投与が注目を浴びています。
G-CSFの正式名称は(granulocyte colony stimulating factor:顆粒球コロニー刺激因子)といいます。
免疫に関わる糖タンパク質であるサイトカインの1種で、顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める作用があります。
G-CSFの一種であるGM-CSFは子宮内膜に注入すると子宮内膜のマクロファージを活性化させ、着床に有利に働きます。
下記のポスターは千葉県の高橋ウイメンズクリニック様がヨーロッパ生殖医学会で発表されたものです。
解説します。
対象:30~39歳の方で単一凍結融解胚移植を行った472周期
培養にはGM-CSFは使用せず通常のもので行い、胚盤胞で凍結
融解時からの回復培養および移植時のメディウムを
GM-CSF+群(Test group)とGM-CSF-群(Control group)で比較
妊娠率(Clinical pregnancy) 52.0% VS 42.2%
流産率(Miscarriage rate) 10.4% VS 19.7%
妊娠継続率(Ongoing pregnanncy rate) 46.6% VS 33.8%
とGMーCSFを使用した群が
・妊娠率
・妊娠継続率
共に有意に高くなったと報告されております。
私が思うGM-CSFの利点です。
・妊娠率が改善がする
・準備期間が必要ない
・患者様に手間や苦痛がない。
使用方法としては移植時に使うメディウムを交換するだけです。
ご希望の方はおっしゃってください。
海外の報告については↓の記事を参照ください。
着床障害を改善するために (G-CSF、GM-CSFについて) ~海外の報告~
当院の胚移植の工夫についてはこちらを
院長 菊池 卓
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静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。