A胚(≒正常胚)を3回移植しても不成功。4、5回目の出産率は?
体外受精・胚移植を行ってもなかなか出産に至らない。
その原因の多くは胚(受精卵)の偶発的な胎児の染色体異常によることがほとんどです。
生殖医療の進歩により着床前診断で
胚が正常かどうかわかるようになりました。
A胚(≒正常胚)を移植した時の出産率は
※初回64.8%、2回目54.4%、3回目54.1%。
3回の胚移植の累積の出産率は92.6%でした。
今回ご紹介する論文は
A胚を3回移植するも成功せず
4回目、5回目をトライした方達の成績です。
多国間の25施設の合計123,987人の64,572件のA胚の移植の中で
3回連続でA胚を移植するも出産に至らず、その後少なくとも1回以上A胚を移植した105件が対象。
卵管水腫、子宮腔内の筋腫・ポリープ、子宮腺筋症などは除外しています。
結果です。
4回目の出産率は40.0%、5回目の出産率は53.3%で有意差はありませんでした。
5回のA胚の移植の累積出産率は98.1%にまで達しました。
筆者らの意見です。
最初の移植前からあきらかにわかる
卵管水腫、子宮腔内の筋腫・ポリープ、子宮腺筋症、肥満などを除くと
今回の結果から真の原因不明の着床不全は2%未満である。
A胚を移植してもうまくいかない場合の
解決策は再度のA胚の移植を行うことであり
効果が証明されていない不必要な検査や治療(NK活性やヘパリン投与など)を避け
その分の意欲と資金をA胚獲得に向けて使うべきだとしています。
私の考えです。
A胚の出産率自体が高いため
4回目、5回目のまとまったデータはあまりなく
今回の105件のデータは多いと思います。
日本においてPGT-Aを行う場合は
少なくとも2回以上の失敗歴が必要になります。
また、採卵を繰り返してもなかなかA胚が出ない患者様もおります。
そんな中でやっとできたA胚で、もし3回も上手くいかない時の患者様のお気持ちは本当につらいものだと思います。
ただ、4回目、5回目に挑戦される価値はあると
今回の論文で感じました。
着床前診断(PGT-A)はまだ保険でも先進医療でもなく
完全な自費のため、費用面的にも
また、採卵を繰り返すことの肉体的なダメージも大きいと感じます。
もし、うまくいかない場合にどうするかは
今後も患者様としっかり相談していきたいと思います。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。