胚移植で胚が残っていて、再度すぐに移植しても妊娠率は変わらない。

 

胚が残っているとは?

当院では胚移植をした後

患者様にしばらく内診台に座って待ってもらいます。

時間的には数十秒程度なのですが

「何を待っているのですか」とご質問を受けます。

 

胚がきちんと子宮の中に入ったのかを

カテーテルの中に胚が残っているかで

確認しております。

 

 

移植が終わると上記の図のように

子宮の真ん中に白い点が見えます。

ただ、これは空気と培養液です。

 

実際の受精卵は0.15mm程度のため

エコーや肉眼では見えません。

 

そのため、胚移植を終えたら

培養士がカテーテルに胚が残っていないか

顕微鏡で確認します。

 

稀ではあるのですが

もし、胚がカテーテルに付着していたら

再度すぐに移植します。

問題ないの?

稀ではあるのですが

患者様としては妊娠率などに

悪影響しないか心配かと思います。

 

結論から言いますと

妊娠転帰に影響を与えないため、患者様や医師も心配する必要はありません。

論文紹介

 

 

胚が残っていることが、妊娠の転帰に関係するかどうかを調べた論文です。

15,321の胚移植周期を後方視的に調べております。

胚が残っている確率は1.4%(213/15,321)でした。

 

年齢や胚のグレードなどをマッチさせて

胚が残らず1回で移植できた方と

妊娠率や生産率、異所性妊娠率などを比較しております。

 

結果です。

 

 

胚が残っていても妊娠率、流産率などに有意差はありませんでした。

 

筆者らは妊娠転帰に差が出なかった理由として

胚が残っているかどうかのチェックを

培養士たちが非常に短い時間で終えているため

差が出にくかっのではと説明しております。

 

また、培養液を2回分子宮に入れるので

胚が卵管に流されて

子宮外妊娠が増えるかもと懸念されていたが

それも差が無いことを報告しております。

 

最後に結論として

胚が残っていても妊娠転帰には悪影響を与えないため、患者さんや治療チームは安心してよいとしております。

 

私の意見です。

胚が残ってしまうのは稀ですが

どうしても起きてしまうことの1つです。

 

ただ、今回の論文にありましたが

すぐに再度移植を行えば問題はありません。

 

胚移植後に少しお待ちいただきますが

上記の理由となりますのでご了承のほどお願いいたします。

 

院長 菊池 卓