PCOSの方の人工授精にはレトロゾールを ~レトロゾール vs クロミッド ~

前回の記事では

体外受精におけるレトロゾールの使い方を書きました。

レトロゾールの使い方 採卵と胚移植では

 

今回はPCOSの方のAIH(人工授精)における

レトロゾールの使い方です。

 

結論から書きますと、当院では

PCOSの方のAIHには

レトロゾールをお勧めします。

 

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方は

排卵しにくいため、排卵誘発剤が必要になります。

 

タイミングの時の第一選択はクロミッドです。

・保険適応があり、排卵率もよく、身体的な副作用も少ないからです。

ただ、欠点として

・子宮内膜が薄くなる

・子宮頸管粘液が少なくなるがあり、

排卵してくれるわりには、妊娠率が低くなります

・多胎率も増えてしまいます。

 

それに対してレトロゾールは

・内膜を薄くしない(むしろ厚くする)

・子宮頸管粘液も減らさない

と妊娠に対して、不利になることは少なく

また多胎になりにくいです。

欠点は適応外使用のため自費になることです。

 

下記論文はPCOSに方に対する

レトロゾール vs  クロミッドの比較試験です。

 

 

PCOSの不妊患者 750名を

レトロゾール(2.5mg/日 5日間)群と

クロミッド(50mg/日 5日間)群にわけ

5周期まで投与をしています。

タイミング法で、

排卵率と妊娠率を比較。

 

累積排卵率 61.7% vs 48.3%

累積妊娠率  27.5% vs 19.1%と

レトロゾール群が有意に高かったです。

流産率と双胎率に有意差はありませんでした。

 

レトロゾールはとても良い特徴が多くあるのですが

PCOSの方のAIH(人工授精)においても

とても有用です。

クロミッドでうまくいかない場合には

r-FSH製剤を連日自己注射する方法もありますが

費用が高くなり、また毎日自己注射をするのも

大変です。

 

AIHは元々全て自費診療になるため

自費であるという欠点は少なくなります。

 

なかなか卵胞が育たない方は

積極的に使いましょう。

 

レトロゾールの内服でも卵胞の発育がない方は

下記の記事もご覧下さい。

レトロゾールでも卵胞が発育しない方へ  ~レトロゾール+クロミッド~

 

院長 菊池 卓

 

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