関節リウマチ、炎症性腸疾患の方の体外受精を成功させるために。
・関節リウマチ
・慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
は妊娠可能な時期に診断される
一般的な炎症性疾患です。
妊娠を希望される女性が発症する可能性がありますが、体外受精での生児獲得率が低くなることが報告されています。
今回ご紹介する論文は
関節リウマチ、炎症性腸疾患の方の体外受精の成功率に関係する因子について調べたものです。
対象は2006年1⽉1⽇〜2018年にかけて、新鮮胚移植を受けたデンマーク⼈⼥性全員。
・リウマチないし炎症性腸疾患のある1,824例
・対象群として疾患の無い97,191例
評価項目は新鮮胚移植あたりの⽣児出産です。
結果です。
生児出生率は疾患のある群が低く、19.4% vs 24.5%でした。
調整オッズ⽐(OR)が0.79(95%信頼区間[CI]、0.68〜0.91)
<体外受精の成功率に関係する因子についてです。
出生率を上げる因子
・胚移植前に処⽅されたコルチコステロイド(プレドニンなど)
・胚盤胞での移植
成績にはかかわらない因子
・ステロイド以外の抗炎症/免疫抑制薬の使⽤
・ホルモン治療プロトコールのタイプ
出生率を下げる因子
・顕微授精
筆者らはリウマチないし炎症性腸疾患のある女性の体外受精に、ステロイドは良い影響を与えることを示唆しているが
投与量や時期についてはさらなる検討が必要としています。
私の意見です。
私の経験でもリウマチや慢性炎症性腸疾患のある
患者様様の治療は難しいと感じます。
なかなかきれいに発育せず
やっと移植できても妊娠率も低めな印象です。
ただ、それを嘆いても仕方がありません。
改善するためにできるだけのことをしていくだけだと思います。
今回の論文からは
・ステロイドの投与
・ICSIを避ける(精子が良ければ)
を取り入れていきたいと思います。
もともと当院ではステロイドのルーチンの使用は行っておりません。
理由ですが
・副作用が出やすい薬剤であること
・14件の研究をまとめたコクランレビューで有用性が明確でない
からです。
ただ、コクランでもあくまで体外受精を行う全員に
ルーチンに使用することを否定しているだけで
今回の論文のような自己抗体のある場合はわからないとしています。
今後は妊娠率をあげるために
リウマチないし炎症性腸疾患のある患者様については、積極的に使用を検討していきたいと考えます。
院長 菊池 卓
静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。