痛くない子宮卵管造影を目指して②
③造影剤の選択
造影剤には油性と水性があります。
油性は粘調性(ねばねば)や腹膜への刺激が強いため、骨盤内腹膜炎(痛みの原因となります)を引き起こしやすいです。
以前は油性のほうが水性よりも妊娠率が高いとされていましたが、最近の文献では有意差を認めないとする報告もあります。(Cochrane Database Syst Rev 2010;11:CD003718)
油性は腹腔内(おなかの中)の貯留時間も長く、甲状腺機能異常(流産の原因となります)にもなるため、水性の造影剤を使用します。
④造影剤の注入速度と量
造影剤の注入方法は施設により様々ですが、痛みをできるだけ少なくするには、造影剤をゆっくり、必要最小限にすることが非常に重要です。
→透視装置(レントゲン動画をリアルタイムで見ることができる)で私と患者さんがお互いに子宮と卵管が写るのを確認しながら、行っていきます。
私が患者さんの痛みの状態と子宮・卵管の画像を同時に確認しながら行いますので、卵管がしっかりと写れば検査は終了です。
造影剤を必要最小限にできます。(およそ2~5mL程度です)
広がり具合も見えますので、速度を微調整することもできます。
また、注入するのもポンプ(機械)で行います。
正直、私がシリンジで手動で注入(手動)でするほうが簡単なのですが、できるだけゆっくりいれるために私が側で観察しながらポンプ(機械)で注入していきます。
人間誰しもが『痛いこと』はしたくないです。
妊娠を望まれ、勇気を振り絞ってクリニックに来ていただいても、最初の検査でつらい思いをされては、その後もつらくなってしまいます。
患者さんにより風船を膨らませる大きさやカテーテルの向き、造影剤の必要量は様々です。
痛みを少しでも減らせるよう、患者さん1人1人にあったベストな『子宮卵管造影』を行っていきます。
院長 菊池 卓
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静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。