採卵の空胞や未熟卵を減らし、成熟採卵数を増やす工夫。
前回は採卵時の空胞や未熟卵の起きる原因について書きました。
詳細は下記の記事を
当院における採卵の空胞や未熟卵への対策です。
当院では採卵のトリガーは基本的に点鼻薬とhCGを併用するダブルトリガーで行っております。
※OHSS riskの高いないしショート法の患者様以外で
トリガーには下記の2種類があります。
・点鼻薬(GnRHアゴニスト)
・hCG
それぞれ良さがあるのですが
点鼻薬は患者様ご自身のホルモン(LHサージ、FSHサージ)で
卵子を成熟させます。
対してhCGはLHと同様の作用を持ちますが
効果の持続時間が長く強力です。
点鼻薬にはLHサージに加えてFSHサージも起こす、hCGは持続時間が長いとそれぞれ違った長所があります。
点鼻と注射と投与経路も違います。
正常な反応をされる患者様にはダブトリガーはそれほど効果がないとする報告もありますが、
上記の報告のように過去の採卵において成熟卵子が少なかった患者様に対して
ダブルトリガーが有効であったとする報告もあります。
費用面と手間が増える以外には
患者様に大きなデメリットが発生しないと考えられるため
当院では初回よりダブルトリガーで行っております。
※OHSS riskの高いないしショート法の患者様以外で
ただ、ダブルトリガーを行っても
空胞、未熟卵になってしまう患者様もおられます。
今回ご紹介する論文はhCGのダブルトリガーについての論文です。
AMHが0.2ng/mL及びAFCが3未満と卵巣予備能が低く
採卵の36.5時間前にhCGで1回トリガーするも卵子を獲得できなかった
35~42歳の85人の女性が対象。
※85人のうち41人は他の診療所に成功の見込みが低いとして治療を拒否されていた。
採卵の36.5時間前に加えて24時間前にも合わせて2回のhCGのトリガーを行いました。
採卵後3日目に1~2個の新鮮胚を移植。
hCGはすべてオビドレルを使用。
採卵はすべて同じベテランの産婦人科医がおこなっております。
結果です。
8人が採卵自体をキャンセル。
66人が卵子回収でき(77.6% 66/77)
57人が少なくとも1回の胚移植ができております。
筆者らはオビドレルが体内で代謝されて、効果を失うのが早いかたがいる可能性に注目しており
そのため注射の量を2倍にするのではなく、回数を2回にしたとコメントしています。
私の意見です。
卵巣予備能が低く、厳しい方達に対して
とても良い結果であると感じました。
ダブルトリガーをしても成熟卵子を回収できない患者様はおられ
改善策に悩んでおりましたが
この論文を読んでから
当院の採卵で成熟卵子が回収できなかった患者様には
従来の点鼻薬+hCG(オビドレル)に加えて
hCG1万単位を加えたトリプルトリガーで行っております。
トリプルトリガーにすればすべての患者様が
成熟卵子を回収できるわけではありませんが
回収率は上がつている印象があります。
卵子が回収できないは非常に悲しいです。
今後もできることは何でも行いますので
ご希望の際にはお伝えください。
※OHSS riskの高い患者様には行えません。
院長 菊池 卓

静岡県静岡市の不妊治療専門クリニック、菊池レディースクリニック院長。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、特定不妊治療費助成事業指定医療機関。刺激周期を主体としたクリニックと自然周期を主体としたクリニックの2箇所に勤務経験あり。患者様のご希望と体質に応じた治療を行っていきます。