妊娠率を上げるために慢性子宮内膜炎を治しましょう。

慢性子宮内膜炎(CE)はその名の通り子宮内膜に持続的に炎症が続いているものです。

自覚症状は無いので、検査をしないとわからないです。

なかなか着床しない反復着床不全の30%以上の方に認め、流産が続く不育症との関連も指摘されております。

 

原則として診断は子宮内膜生検でCD138の免疫染色を行うことですが、子宮鏡や細菌叢を調べるフローラ検査で診断する取り組みも行われています。

治療は抗生物質の投与です。

 

下記の論文のように慢性子宮内膜炎を治療すると妊娠率が上昇し、流産率が上昇するとの報告は数多くあり、私も日々の臨床で実感しております。

 

 

 この論文では子宮鏡と組織学的検査によって子宮内膜炎と診断された 61名の女性の中の

46名 (75.4%)は適切な抗生物質療法後に正常と判定され、これらをGroup1(治療が効いた群)とし

15名 (24.6%)は子宮内膜炎が持続しておりこれをGroup 2(治療が効かなかった群)としています。

 

子宮内膜炎(CE)の治療後 6か月以内に行われた最初の IVFにおける生児出産率の比較を行ったの以下の結果です。

 

 

初回IVF後の妊娠率 65%   VS    33%   

                 生産率 61%   VS    13%

いずれも有意差ありで、慢性子宮内膜炎が改善されると妊娠率及び生産率が高くなることが報告されております。

 

流産率も有意差こそ出ていませんが、4%  VS  20%と改善群が高いです。

 

同様な論文は多くあるため、当院でも慢性子宮内膜炎の治療を積極的に行なっていきます。

 

ただ、診断方法および抗生物質の投与量については、明確な基準が無くクリニックごとに様々です。

大量かつ長期間の抗生物質の弊害も指摘されるようになりました。

 

患者様により状況は様々ですので、治療方針については個別に相談させていただきます。

下記の記事も合わせてお読み下さい。

子宮内フローラとは 子宮鏡検査について

 

院長 菊池 卓

 

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